無良崇人が逆転優勝!!
10月30日から11月4日、BC州オカナガン地域のケロウナにて、スケートカナダの一大イベントが催された。フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第2戦のカナダ大会は、初日の公式練習日を含め、公式戦として2日目はショートプログラム(SP)、3日目はフリープログラム(FP)を行い、順位決定後に表彰式が行われた。最終日には特別の競技会があり、会場の観客を魅了した。
会場には無良選手や小塚選手の名前の入った日本語の横断幕が掛けられ、はるばる日本からこのスケートカナダのためにやって来たファンもいた。日本人スケーター演技の後には花束を差し出す姿も見受けられた。
男子の部でSP2位の無良崇人(HIROTA)が1位となり、ハビエル・フェルナンデス(スペイン)を約11点引き離して逆転優勝を果たした。合計255.81点を獲得し、GPシリーズにおいては2012年フランス杯以来2度目の勝利。
バンクーバー冬季五輪代表の小塚崇彦(トヨタ自動車)は、男子の部でSP6位だったが、合計213.17点で8位となった。
女子はSPで4位だった宮原知子(大阪・関大高)がFPで121.53点を出し、合計181.75点で上位3位に入賞し、GPシリーズ初の表彰台に上がった。 SPで5位だった本郷理華(愛知みずほ大瑞穂高)は、171.47点で5位となった。
男子優勝者として表彰された無良崇人(中央) (11/1)©Skate Canada/Stephan Potopny
女子第3位として表彰台に上がった宮原知子(右)(11/1)©Skate Canada/Stephan Potopny
FPで逆転優勝した無良崇人
SPでは2位だった無良は、FPでは4回転とコンビネーションジャンプがGOEで引かれた以外はほぼノーミスの演技。着実に、そして表現力豊かに滑る姿に、観客席が沸きたっていく様子が感じられた。
無良自身「本当にものすごく驚いています。でも一生懸命やってきたことが結果に出ました。頑張ればいいスコアが出るんだということを学んでいます」とコメントし、「心配していたのは4回転以外の部分だったけれど、不安に思っていたところも乗り切れました。途中から自分の中に入り込んで、いい演技ができていると感じた」と続けた。
FPのアンドリュー・ウェバー作『オペラ座の怪人』を演じ終えると、会心の出来にリンクの上でガッツポーズ。演技は得意のジャンプだけでなく、スピンでも観客を魅了。最後には会場が総立ちになった。FP、合計得点共に自己最高点を確認し、思わず感極まった様子だった。
「今までスケートをしてきた中で一番いい試合でした。すごく良い演技ができたことに、自分でも驚いています。もしかしたら、まだ時差ぼけが残ってる段階で昼からの演技だったことが、すごく良い方に働いたのかもしれません。珍しい新鮮な経験でしたから。早朝練習から本番までそんなにあかなかったので、自分の中にまだ氷の感触が残っていました。本当に良かった」とカナダでのスケート体験をポジティブに受け取っていた。
そして、第2位に約11点も差をつけて逆転したことに対しては、「優勝できるとは思っていなかった。すごくうれしい」と喜びを表明した。
無良 崇人(むら・たかひと)1991年2月11日、千葉県松戸市生まれ。両親とも元フィギュアスケート選手だった影響から、3歳でフィギュアスケートを始める。初出場した2008年の全日本選手権で3位に。世界選手権には2度出場し、最高成績は8位。2014年1月の四大陸選手権で優勝を果たす。父・隆志さん(53)がコーチを務める。
男子ショートプログラムの無良崇人(10/31)©Skate Canada/Stephan Potopny
男子フリープログラムの無良崇人(11/1)©Skate Canada/Stephan Potopny
本領を発揮できなかった小塚選手
アンドレア・ボチェッリのイタリア語ヴォーカル曲『これからも僕はいるよ(Io Ci Saro/イオ・チ・サロ)』の調べに、風に舞うシルクのような軽やかな演技を見せた小塚選手。今回は残念ながら8位となり、「だいぶん(調子が)戻ってきたと思っていたが、そんなにうまくいかなかった。ジャンプが駄目だと全体的な印象が悪くなる。もっと自信をつけないと」と語っていた。
小塚崇彦(こづか・たかひこ)1989年2月27日、愛知県名古屋市生まれ。祖父、両親、叔母がフィギュアスケーターの環境に生まれ、『日本フィギュア界のサラブレッド』とも呼ばれる。10年バンクーバーオリンピック8位、11年世界選手権2位、08年GPファイナル2位、10年全日本選手権優勝、06年世界ジュニア選手権優勝の実績がある。
男子ショートプログラムの小塚崇彦 (10/31)©Skate Canada/Stephan Potopny
男子フリープログラムの小塚崇彦(11/1)©Skate Canada/Stephan Potopny
紅いコスチュームで147㎝の小柄な身体で『ミス・サイゴン』を演じ、観客を魅了した宮原知子(大阪・関大高)。女子3位でGPシリーズ初の表彰台に上がった彼女は、「回転不足もあったけれど、滑りは気持ち良かった。これからは、ジャンプの回転不足を意識して、点数が出るようにしたい」と振り返った。
宮原知子(みやはら・さとこ)1998年3月26日、京都府生まれ。幼少期から7歳までアメリカ、ヒューストンで育つ。4歳でスケートを始める。2011年、2012年の全日本ジュニア優勝。2012年の全日本選手権では浅田真央選手よりも高い技術点を獲得し、3位で表彰台に上がる。2012年アジアフィギュア杯で、ジュニア、シニアともに優勝。
宮原知子©Skate Canada/Stephan Potopny
宮原知子©Skate Canada/Stephan Potopny
赤と黒の印象的な衣装、長い手足を駆使して『カルメン』の曲を優雅に演技をした本郷理華(ほんごう・りか)は、FPでも得意なジャンプを披露。SPでは5位。総合でも5位だった。
本郷理華(ほんごう・りか)1996年6月9日、宮城県仙台市生まれ。2010-11シーズンに全日本ジュニア選手権に出場し19位となる。2011-12シーズンよりISU ジュニアグランプリシリーズに参戦し、2位に入る。2014年シニアの国際大会に初めて出場しトリグラフトロフィー優勝。2014年、初戦であるアジアフィギュア杯優勝。
本郷理華©Skate Canada/Stephan Potopny
本郷理華©Skate Canada/Stephan Potopny
(取材 北風かんな)