東京で生まれ高校卒業まで日本で過ごしたリサさん。バーナビー市でThe Beloved Dogという犬のデイケア施設を経営している。犬が大好きで現在の仕事について「とても楽しい」と話すリサさんにとっては天職といえるかもしれない。
就くべき仕事に就いたという実感
日本人の父と中国人の母との間に生まれ、東京の麻布十番で育ったというリサさん。インターナショナルスクールに通っていたので英語が自分にとっては第一言語だと言う。「ただ、学校や家の外はみんな日本語ですし、テレビなど日本語に触れている時間は長かったのでかなり分かります。日本語のニュースも新聞もほぼ理解できますね。自分が話す時は思うことがなかなか言えないときもありますけど」と言うが、日本人が違和感を感じることがないほど流暢に話す。
高校を卒業後、家族でカナダに移住してきた。移住後すぐにリサさんは一人暮らしを始め、いろいろな仕事に就いてきた。現在のビジネスを始めるきっかけとなったのは、愛犬の死だった。当時、ホテルに勤めていたリサさんは3匹の犬を飼っていた。そのうちの1匹が予防接種を受けた後の副作用で急死、あまりの衝撃にリサさんは職場に3日間の休暇を願い出たという。しかしペットの死くらいで休まれては困る、と言われてしまった。「こんなに悲しんでいる状態で普通に仕事をすることができない」、と退職を決意した。その後犬を連れて行ける職場はないか、と考えたがそんなところはそうそうない。そこで自分でペット関連のビジネスをしようと思い立ったという。
最初に始めたのは、日中家を留守にする家庭の犬の散歩や世話をするサービスだった。反響は大きくお客さんは増えていく一方で、スタッフを雇うようにもなっていったという。そこで犬のデイケア施設をオープンすることを考えたときに「ちょうどそういう施設の経営を辞めた方の後に入ることができました。少し改装をしたくらいですぐにビジネスを始められたのでラッキーでしたね」。2008年にオープンしてから顧客はどんどん増え、もう少し広い場所に移りたいと考え探し始めたところ、やはり犬のデイケアをしていた場所が売りに出ていて移転することになったという。まるでこの仕事をするのが決まっていたかのような展開に「神様に導かれてきた、というような気持ちがしますね」と言う。現在の場所は2012年にオープン。以前の3倍くらいの広さで預かる犬の数も倍以上になった。
犬にとって最適の環境を提供したい
The Beloved Dogでは常時50匹近くの犬を預かっているという。他にも、グルーミングやデイケアまでの送り迎えなどのサービスもおこなっている。もう何年も通っている犬も多いということで、それだけ信頼されていることの証だろう。ビジネスをしていく上で難しいこと困ったことがないか聞くと、「オーナーとしてビジネスを経営していくことはストレスを感じることも多いけれど、仕事の内容についてはとても満足しています。これまでにこの仕事が嫌だと思ったことは一度もありません」とのこと。このビジネスを始める前にオフィスワークなどいろいろな仕事をしてきた。自分がスタッフを雇ってビジネス経営するのに際して、自分自身が雇われる側の経験をしてきたことも役に立っていると言う。
これから先の展望について尋ねると「もしできたら、2件目のデイケア施設も出したいです。今、しつけのトレーニングコースはやっていますが、アジリティー(障害物競技)トレーニングのコースもやってみたいと思います。それからハイドロセラピー(水を使った理学療法)ができる施設を経営するのも夢です」と語ってくれた。ペット産業は近年広がりを見せているだけに、ビジネスの幅を広げるチャンスだと感じているそうだ。そんなリサさんが道を切り開いていくことに期待したい。
(取材 ルイーズ阿久沢)
The Beloved Dog Pet Services
住 所: 4025 2nd Avenue, Burnaby
電 話: 604-299-2480
2013年6月20日 24号掲載