2003年に創設されたコンテンポラリー・ダンスのBackhausdance。少数精鋭のこのダンス・カンパニーの公演は、空間を飛び跳ね、床を転げ回り、振付家が与えたテーマを、それぞれのダンサーが自分なりに解釈して肉体を駆使して表現している。BC州にもツアーで訪れることがある同団の唯一の日本人ダンサーの佐野ちひろさんに話を聞いた

プロのダンサーになる決意
 中学三年生の時に学校のクラスで将来の夢を書いて提出する際に何も思いつかなかったので、大好きなダンスを続けたい想いから「ダンサーになりたい」と書いて提出しました。ところが、先生の一人に「冗談だろー」と笑われ、とても悔しい思いをしました。このことがきっかけで、絶対にダンサーになってやる!と決意しました。

北米に来たきっかけ
 7歳の頃から師事している石井晶子モダンバレエ団研究所の石井晶子先生から「ダンスを本気でやりたいのならアメリカへ行きなさい」と勧められたのがきっかけでした。
 留学を決意したのは、友達に「ちーちゃんなんかに留学は絶対無理!」とからかわれた時でした。私は負けず嫌いで自分ができることを自他共に証明したくて、ここまでやってきたようです。2005年にカリフォルニア州のサンタアナ大学ダンス科に留学を果たし、同校を卒業後に見習いとしてBackhausdanceに入団。2010年から同団の所属ダンサーとして踊っています。

現在のお仕事の内容について
 Backhausdanceはコンテンポラリー・ダンスの新しい作品を創るほか、教育機関(小中高、アフタースクール)での公演も活動の一環となっています。アーティスティック・ディレクターのジェニー・バックハウスが振付担当をしています。作品を創るにあたって、ジェニーはダンサー達と共同作業をすることが多く、ダンサー達の意見を常に取り入れてくれます。私にとって振付家にアーティストとしての自分の意見をしっかり聞いてもらえるということはとても重要なこと。このカンパニーて踊っていると、いつもアーティストとしてどのように作品に向き合うのかチャレンジが多く、とてもやりがいがあります。

現在のお仕事以外の活動について
 ダンスカンパニーでのダンサーの活動の他は、ダンス講師、ヨガ講師としても働いています。ヨガは大好きなので、時間のあるときは自分でもよくクラスを受けに行っています。また、機会を作って他のダンス・カンパニーの公演を見に行っています。ダンサーは少食のイメージがあるかも知れませんが、私は食べることが大好き。いつも食べ物のことを考えています(笑)

これからの抱負
 アーティストとして常に成長していくことです。以前はパフォーマーとは、『何かそこにないものを創りあげるのが仕事』だと思っていました。でも、今は『自分の内にあるものをどれだけ素直に出せるか』が本当に大切で、魅力のあることなのではないかと思います。素の自分、そのままの自分を観てもらう。舞台に立つとき嘘のない自分でいたいと思います。例えば、ブランド品のバッグを買う時に騙されて偽物を買うより、少し傷がついていても本物を手に入れる方がずっといいと思うのです。ダンスも同じだと思うんです。見に来てくれた人に嘘偽りのない生の自分を観てもらう。良いところ、悪いところ、全部含めて。観客にそんなさらけ出した自分の姿を受け入れてもらえるか、もらえないかは未知数。それでも拒否されることを恐れないで踊り続けるアーティストになりたいと思います。

 激しい動きで自らを表現するコンテンポラリー・ダンスの道を選んだちひろさん。彼女のこれからの活躍が楽しみだ。
(取材 北風かんな)

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