2020年4月30日 第14号
初めての出産は誰もが不安に思うこと。ましてや海外での出産となると、頼りにできる家族がいない、言語や医療システムが違うなど、さらに不安の要素が増える。そんな中、日本の看護師経験を持ち、5人の出産を経験したミッシェル・ユキ・レオンさんがアドバイザーとなっているMOMが、力強く地域の新米ママを応援している。出産準備クラスや産後の訪問指導、授乳指導、赤ちゃんと親が集まってのポットラックパーティーと、精力的に母子のサポート活動に当たってきたミッシェル・ユキ・レオンさんに話を聞いた。
長年続けてきた新米ママ、パパが集うポットラックパーティー。こうした集まりを再開できる日が待ち遠しい
−妊婦、産婦の人たちの手助けを始めたきっかけは?
日本での看護師の経験を生かして、子育ての合間にできるボランティアをしたいと、「医療相談を受けますよ」とお知らせを出したのが始まりです。多かったのが妊婦さんからの相談でした。友達は日本に帰ってしまい、自分だけがカナダに残り、孤独や不安な思いを持っていたんですね。それならお母さんたちが集まる場所があれば、お友達ができていいかなと思い、自宅を開放してポットラックの会を始めたんです。
−活動を始めた頃、ミッシェルさんの子どもたちはいくつだったんですか?
始めたのが1997年の春だったので、12歳を頭に2、3歳間隔でいて、一番小さい子は赤ちゃんでした。
−そんな子どもに手のかかる時からの活動だったのですね。
ネットで何でも調べられる時代ではなかったので、泣きながら電話をしてくるような方がいると、できることなら何かやってあげたいと思っていました。そこで妊婦さんに必要なことはまとめて教えようと、カナダでの出産情報を調べ、自分の経験も含めてテキストを作り、出産準備クラスも始めたんです。
−ママさんたちの出産後の育児の悩みトップ3は何ですか?
まず授乳ですね。赤ちゃんがうまく母乳を飲んでくれない。胸が痛いというのが出産後1、2カ月で一番多いです。そしてアトピーなどの発疹。それから離乳食がうまく進まないというものです。同じくらい夜の睡眠の相談も多いです。
−そして授乳の指導も始めたのですね。
カナダより日本の方が少し乳房のケアの技術が進んでいて、私は母乳マッサージを学んだ経験がありましたので、その技術を生かして授乳指導も始めました。今の種々のMOMの活動はすべてお母さんたちの希望と必要から始まったものです。
−夫の育児参加についてはどうですか?
国際結婚の人が多いため、出産準備教室には通訳を付けて、夫に奥さんの状況をよく理解してもらえるようにしています。そこで必ず言うことは、「妊娠中は奥さんがクイーン、夫はナイト。産後はお母さんはクイーンで、赤ちゃんはプリンスやプリンセス。そして夫はサーバント(召使い)になってください。キングは子どもが大きくなってからです(笑)」ということです。異国で出産育児をするお母さんにとって、ご主人のサポートはとても重要です。
−これまでのMOMの長い経験の中で印象的なことは?
妊娠中から出産、育児で関わりをいただいた後、何年も経った後にも覚えていてくださる方が「MOMがあったから海外でお産ができた」と言ってくださることはとてもありがたく喜びです。どの方にも満足していただくことはできませんが、少しでも笑顔になっていただけるサポートができたらと、今もずっと学びながら活動を続けています。残念ですが、後継者がいないので体の動く限り努力を続けていこうと思っています。
最近まで実費分の会費だけでMOMを運営してきたミッシェルさん。母子をサポートすることへの強い使命感が落ち着いた声から伝わってきた。
MOM Family Support
http://www.canadamombaby.com/
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(取材 平野香利)
出産時のサポートなど、24時間態勢で臨むMichelle Yuki Leonさん。「赤ちゃんがかわいいから元気をもらえます」