2020年1月16日 第3号
1月11日、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市のEnglish Bayにて、第50回佐藤派糸東流国際連合寒稽古が開催された。冬のバンクーバーにしては珍しく太陽が顔を覗かせる一方、体勢を崩しそうになる程強く吹き荒れる冷たい風。荒れた空模様の中、稽古は昼の1時から始まった。まずは砂浜に整列し挨拶を行い、ランニング、準備体操、筋トレと続く。形、組手の練習を行い、そして最後はなんと海の中へ。凍える寒さに負けず、約40人の参加者が稽古に励んだ。
強い風が吹く中、始まった寒稽古
「多い時は150人くらい参加していた」と代表の佐藤義輝さんは語る。空手の競技化に伴い、寒稽古の参加者数は減少の一途を辿っているそうだ。精神面を鍛える本来の空手の考え方は廃れつつあり、勝つ為の技術を磨くことだけに重きが置かれるようになったからだ。「寒さで風邪をひいたら練習ができなくなってしまう」と考える人が増えたのである。
「例年以上の強風と高波で吹き飛ばされそうになった」と佐藤さんは振り返る。「ただその厳しさを乗り越えたからこそ感じられる達成感は格別だ」と清々しく話してくれた。その達成感は、他の人にとっても同じものである。「最初はとても寒かったけど、終わった後は非常にいい気分で楽しかった」と参加者の一人が笑顔で語ってくれた。空手の現代化が進み、心を鍛えることを重視した伝統的な考え方は、逆風にさらされている。しかし、それに耐えてこそ見えてくる新たな考え方もあるのではないだろうか。それは凍てつく寒さを乗り越えた先に、あるもののように。
(取材 Koki Mizuta)
ランニングで体を温める参加者達
いざ、海の中へ