2019年3月28日 第13号
3月18日から24日まで、バンクーバー市内のデイビッド・ラム・ホールで『バンクーバー・ファッション・ウィーク』(VFW)(メディアスポンサー:バンクーバー新報)が開催された。初日には主賓として在バンクーバー日本国総領事館より多田雅代首席領事が出席。会場では約700席が満席となり立ち見客や報道陣が見守る中、『EMIJINGU』のバルーンドレス8着がランウェイショーを飾った。
神宮エミさん(中央)
バルーンを差し出すと笑顔に
役者をしながら、バルーン・アーティストとして子供たちにプードルや花を作っていた神宮エミさん。バルーンを差し出すと子供たちが一瞬で笑顔になるのを見て、まるで魔法の道具のようだと思った。2013年から本格的にバルーンを仕事にして、大会で見て感銘したのが『バルーンドレス』だった。
使用するバルーンは細長いタイプで、膨らましたときの太さが1インチ、長さ60インチ。プードルを作るのより少し細いタイプを、ひねったり織り上げて作る。
ドレスを近くで見ると、縦と横が折り重なっている。バルーンの特質上、少しでも長持ちさせるためにボンドをコーティングして膨らますなど細かい作業も多く、一着作るのに12時間近くかかることもある。
色と質感の違いを表現
VFWで発表したのはタートルネックやVネック、タイトなミニなど、バルーンだけで作ったとは思えないオリジナルデザイン。
「最も大切にしているのは色です。今回のコレクションでは、同じ素材から生み出される質感の違い、可能性を表現するために、ゴールドとシルバーを選びました」
ゴールドの中にチョコレートブラウン色を入れてメタリック感を出したり、透明なバルーンにブロンズの絵の具を入れて重厚感を出したり。2枚重ねで色合いを作り出すなど、1着につき使ったバルーンは約500本にのぼる。
バルーンの無限の可能性
2011年のスタート以来著しい成長を遂げたVFWは、若手デザイナーが世界で活躍するきっかけを提供している。
「モデルが出て行く1分前まで作業していました。角度とか、こだわったらきりがありません。VFWのランウェイで作品を発表することができ、夢がひとつ叶いました」
クリーム色の髪に帽子をかぶり、ルーズなウエアをはおり、まるで童話の世界から飛び出した少年のような神宮さんがそう話した。
広告や撮影のために製作するバルーンドレス。永遠に持続できないアートだからこそ、そこに価値がある。バルーンアートはプードルや花だけではない。バルーンの持つ幅広い世界観と可能性を発信中だ。
神宮(じんぐう)エミ:バルーン・デザイナー。2013年からバルーンアート(風船で創る芸術)の仕事を本格化させる。2017年にニューヨークでの海外個展を開催。2018年1月にラスベガスで行われたバルーンアートの全米大会バルーンドレス部門で優勝。同年8月、ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリ4大コレクションを回り、balloon clothesのフラッシュ・ファッションショーを開催。
(取材 ルイーズ阿久沢)
『EMIJINGU』コレクション
1着につき約500本のバルーンを使用
1着につき約500本のバルーンを使用
1着につき約500本のバルーンを使用