2018年11月15日 第46号

1996年から2006年に竣工された日本の建築から、槇文彦、安藤忠雄、隈研吾、伊東豊雄などが設計した代表的な作品を選び、日本の社会文化状況と対比させながら紹介、写真や立体模型を織り交ぜながら展示する現代日本建築展が開かれている。在バンクーバー日本国総領事館と国際交流基金が主催し、ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)のSchool of Architecture and Landscape Architecture(SALA)とRevery Architectureが協力している。11月6日、バンクーバー市のUBCロブソンスクエアでオープニングレセプションが開催された。

 

ロブソンスクエアのスケートリンクに面したサンルームは見つけやすい。入場無料なので気軽に入って観覧できる

 

海外巡回展の最後を飾る

 この展示は日本建築学会の協力を得て、2006年の東京での展示を皮切りに世界各国の50都市で開催されてきた。バンクーバーでの開催は51都市目であり、12年にわたって行われてきた海外巡回の最終地点でもある。オープニングレセプションには、SALAの教授や学生、建友会や日加協会の代表者、建築・造園関係者ら約20人が招待された。

 最初に在バンクーバー日本国総領事代理の多田雅代首席領事が、展示作品を選びパネル等の設置を担当したSALAのマリ・フジタ准教授やボランティアの学生、Revery Architectureの本間しのぶさんに謝意を示した。そして、日本の建築物デザインの潮流の変化について触れた。自然との調和を重視してきた伝統的な日本建築は、19世紀からは西洋建築のエレメントを多く取り入れたものに移行していった。21世紀に入って再び、伝統的な日本建築と西洋建築の要素との調和が注目され、そこからまた新しいデザインが生まれてきていると述べた。

 次にフジタ准教授が、今回の展示は、都市部の商業ビルなどといった建築物、学校や病院など生活に根ざした建築物、図書館や博物館などの文化施設、一般家屋という4つのカテゴリーに分けられていると説明した。続いて本間さんが、110点以上のパネルや模型のうち、今回はその3分の1ほどの展示となったことは残念だが、フジタ准教授と共にバラエティに富んだ内容になるように選んでいったと話した。そして、2人とも展示作品を選んでいく作業は楽しいものだったと述べた。

 

現代建築の歩みを見る 

 1996年から2006年というと、日本ではポストバブル期へと移行した頃。2005年には日本の総人口が統計史上初めての減少となった。また、グローバル化が進む中、海外の建築家のデザインによる建築物が増えたのと同時に、海外で活躍する日本の建築家も増えていった。そうした社会状況と照らし合わせながら、日本における建築デザインの変遷を見るのも興味深い。バンクーバーでの展示では、商業ビル、博物館、墓所、教会、そして一般の家屋までさまざまな用途の建物の展示物が、コンパクトながらバランスよく揃えられている。日本の地理、気候、社会的条件などを考えて造られた建物と、カナダにおける建築物との違いを見出すのも面白いかもしれない。

 

Parallel Nippon 現代日本建築展
期間:11月6日〜20日
月〜金 7:00〜22:00
土・日 7:30〜17:30
場所:UBC Robson Square(地下1階、サンルーム)800 Robson Street, Vancouver
入場料:無料

(取材 大島多紀子)

 

パネルには建物の外観、内部の様子などもあり、見ごたえがある

 

在バンクーバー日本国総領事代理の多田雅代首席領事

 

ブリティッシュ・コロンビア大学School of Architecture and Landscape Architecture のマリ・フジタ准教授

 

Revery Architectureの本間しのぶさん

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。