2018年9月13日 第37号

今年も新朝日チームのシーズンが始まった。朝日ベースボール・アソシエーション主催、第5回朝日レガシーベースボール大会が9月3日、バンクーバー市ナナイモパークで開催された。

戦前にバンクーバーで人気を博した日系人野球チーム「朝日」のレガシーと意志を受け継ごうと結成された新朝日チーム。5年目を迎え、朝日野球はますます盛んになっている。

夏の最後を惜しむようなさわやかな青空が広がったこの日は、午前中から年齢別に試合が組まれ、すっかりお馴染みとなった『Asahi』のロゴが入った赤いユニフォームを身に付けた選手たちが、1日中フィールドを駆け回り野球を楽しんだ。

午後には「朝日」を称えるレガシーゲームを開催。今年は2019年3月に日本へ遠征する若き新朝日と2017年に日本遠征した元新朝日の選手を含む朝日同窓チームの対戦が実現した。

結果は野球経験豊富な同窓チームが勝利。同窓チームにとっては楽しく、若い新朝日の選手たちにとっては日本遠征に向けて課題の見えた好ゲームとなった。

 

新朝日チームと朝日同窓チームの選手たちとコーチ、関係者全員で記念撮影。9月3日バンクーバー市ナナイモパーク

 

2019年日本遠征に向けて新朝日が発進

 2014年に発足した新朝日チームは、2015年から2年に1度、3月に日本遠征を実施している。

 来年はその日本遠征イヤー。前回の遠征で活躍した選手たちは卒業し、次回は新メンバーで日本の野球チームに挑戦する。

 この日は、その新チームのお披露目試合でもあった。前回遠征時に監督を務めた猪亦功憲さんは、13歳から15歳の選手で構成した若いチームと説明。これから練習を重ね来年の遠征に備えるという。前回は監督として遠征前には「初勝利」を目標としたが、結果は5勝4敗の勝ち越しと上々の遠征結果だった。今回は「ベストを尽くします」と笑った。

 監督してチームを率いる福村十三郎さんは、前回2回の遠征チームと比べて「一番若いチーム」と言う。2017年は2015年の遠征に参加した経験のある選手が揃っていたが、今回は「若い選手にチャンスをあげたい」と若い力に期待を込める。3回のトライアウトで選ばれた選手たち。「若いけどいい選手も多いので、これから春までもうちょっと練習して」と、ここからチームとして作り上げて春の遠征に備えると語った。

 キャプテンに選ばれたのはブレイク・ダラ-ザナ選手。17年遠征にも参加し、今回が2回目。試合後話を聞くと「大変だったけど良かったと思います」と試合を振り返った。「これから春までに練習をしてチームとしてまとまっていければ大丈夫かな」と笑う。遠征に向けては「すごく楽しみ」と言う。「前に行った時に会った人たちに、また会えるのを楽しみにしています」と笑顔を見せた。

 

「朝日」の野球を引き継ぎ、日本野球のよい伝統を取り入れて

 戦前バンクーバーに存在した日系人で構成された野球チーム「朝日」。今では伝説となっている「朝日」の野球精神を大事に、日本野球のよい伝統も取り入れて、野球を通して社会に通じる礼儀と日加の交流を図っている。

 朝日レガシーゲームは、2014年9月にアソシエーション主催で初めて開催された。これをきっかけに誕生したのが新朝日チーム。レガシーゲームは以後、毎年この時期に開催されている。

 創設時15人だった新朝日メンバーは今年155人となった。それでも、そのモットーは変わらない。戦前のバンクーバー朝日軍が大切にしていた野球に対する姿勢を受け継いでいく。それは、技とスピードの頭脳プレーと野球に真摯に取り組むフェアプレーの精神、そして野球が楽しめることを可能にしてくれた全てに対して感謝の気持ちを持ってプレーすること。

 それは、グランドに入る時に一礼する、試合が終わると支えてくれた人たちに一礼する、道具を大事にする、そういうところにも表れている。

 試合前にあいさつしたジョン・ウォン会長は、「『朝日』チームの残してくれた素晴らしい遺産を受け継いでいくために今日ここにみんなで集まりました」と語り、5年でここまで選手が増えたことを「朝日で野球をしたいと思ってくれる人たちがいてチームとして大きくなれました。そのことに感謝したい」と朝日を取り巻く人々の努力に感謝の言葉を述べた。

 2019年遠征チームは、3月14日に出発、神奈川県横浜市、滋賀県彦根市で地元チームとの交流試合が予定されている。

 

新朝日チーム

 2014年のレガシーゲームをきっかけに創設された野球チーム。最年少は7歳。性別、国籍を問わず加入できる。2年に一度日本遠征を実施。13〜16歳のメンバーで構成された新朝日チームが日本で親善試合を行い、野球を通じた交流を図っている。次回は2019年。

 毎年9月下旬にはブリティッシュ・コロンビア州カムループスで行われる試合に、同地に在住する元朝日メンバー上西ケイ(功一)さんに新朝日チームの試合を見てもらうため参加している。

バンクーバー朝日軍

 戦前1914年から1941年までバンクーバーに存在した日系人で構成された野球チーム。技とスピードと頭脳プレーでファンを熱狂させ、フェアプレーの精神は差別時代にあったバンクーバーで日系以外のファンも魅了した。1941年12月、日本軍の真珠湾攻撃を機にカナダ政府の日系人強制移動政策のためチームは解散。二度と復活することはなかったが、2003年カナダ野球殿堂入りを果たした。2005年BCスポーツ殿堂入り。今では伝説のチームとして語り継がれている。

(取材 三島直美)

 

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