2018年1月25日 第4号
1月14日、バンクーバー市のH.R.マクミラン・スペース・センターでラウル・ワレンバーグ・デー(メディアスポンサー:バンクーバー新報)が開催された。今年は、米国の大手金融機関の不正に関する告発を行ったエレイン・フレイシュマン氏の勇気ある行動を称えて表彰した。
テレビ番組内でインタビューに応えたエレイン・フレイシュマン氏。授与式には欠席
・勇気ある行動で他者を助けた人々を称える・
この催しはスウェーデン領事館やユダヤ系グループなどの共催で2006年から行われているが、2014年からはスウェーデンとユダヤ系コミュニティの人々によって結成されたワレンバーグ‐スギハラ・シビル・カレッジ・ソサエティ(WSCCS)が引き継いで開催している。
スウェーデンの外交官だったラウル・ワレンバーグは、第2次世界大戦中、ハンガリーのブダペストに駐在していた。中立国であるスウェーデンの保護証書をユダヤ人たちに発行し、彼らを安全な場所にかくまった。ソビエト軍がブダペストを1945年1月17日に占領した後、ワレンバーグは消息を絶った。ワレンバーグ・デーは、その1月17日に最も近い日曜日に開催されている。リトアニア領事館に駐在していた日本人の外交官杉原千畝は、日本政府からの訓令に背き、ユダヤ人に日本通過ビザを発給し続けた。そのことで彼自身や家族は身の危険にもさらされた。ワレンバーグ・デーは、この2人のように自身への危険も顧みず、自らの道徳観に従って、勇気ある行動を取った人々を称えて表彰し、こうした精神を継承していくことを目的としている。
・シビル・カレッジ賞の授与・
式典ではWSCCS会長のアラン・ルフェーブル氏が司会を務めた。まず、バンクーバー市長代理として出席したレイモンド・ルイ氏がワレンバーグ・デー開催宣言を読み上げた。続いてWSCCS理事のアナ・ポリッツァー氏が、WSCCSやワレンバーグ・デーについての説明を行った。2015年のワレンバーグ・デーで第1回シビル・カレッジ賞を授与した元BC州首相のウジャル・ドサンジ氏が基調講演を行い、内部告発という挑戦に挑む勇気について語った。
今回表彰されたエレイン・フレイシュマン氏は、BC州出身の弁護士。ニューヨークで大手金融機関の品質管理を担当していた時、モーゲージ商品の「巨額の違法な証券詐欺」が行われていることを目撃した。こうした不正な取引を止めようとするフレイシュマン氏の動きはことごとく阻止されたが、証拠を残すことができ、後に米国司法省に証人として召喚された。司法省との示談によりこの銀行には90億ドルの罰金が科せられた。フレイシュマン氏は、「すべてを失うことになるかもしれないが、声をあげなければ行きつくところは『史上最大の金融機関による隠ぺい』だ」と考え、告発に踏み切ったと話す。現在も証人としての立場から式典には出席できなかったが、同氏の正義を貫いた勇気に今年のシビル・カレッジ賞が授与された。その後、フレイシュマン氏のインタビューを放映した米国のテレビ番組を鑑賞し、ドサンジ氏と会場の参加者とでディスカッションの時間が設けられ活発な意見交換が行われた。
(取材 大島多紀子)
ワレンバーグ・デー開催宣言を手渡すレイモンド・ルイ氏(右)と、WSCCS会長のアラン・ルフェーブル氏
基調講演および観客とのディスカッションを行った、元BC州首相のウジャル・ドサンジ氏
熱心に話に耳を傾ける来場者