2017年9月14日 第37号

9月10日、バンクーバー市内ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)内のチャン・センターでバンクーバー・メトロポリタン・オーケストラ(VMO)が15周年記念コンサートを開いた。約1120人の聴衆を前にバンクーバー・バッハ合唱団とともに演奏したベートーベンの『第九』。15年間の歩みを祝福するように『歓喜の歌』でフィナーレを飾った。

 

スタンディング・オベーションで幕を閉じたVMOコンサート

 

VMOを経てプロに

 この日、チャン・センターのステージに並んだオーケストラ団員にはそれぞれの想いがあった。その中のひとりがチェロ奏者のルーク・キムさんである。

 VMOに入団し経験を積んだキムさんは2010年、VMO内でソリストに抜擢され、日本から招へいされたヴァイオリニストの松本蘭さん、ピアノのエイミー・リーさんと協演し、ベートーベンの『トリプル・コンチェルト』を演奏した。

 バンクーバー交響楽団(VSO)の団員となった今も、VMOに参加している。今回のコンサートで首席チェロ奏者を務めたキムさんは、ときにはうれしそうな微笑、ときには激しい表情を見せ、演奏することが本当に好きなことが伝わってきた。

 

後輩の指導も

 2002年に16人の若い演奏家を集めて始めたVMO。音楽監督で首席指揮者のケン・シェさんは「コンサートを開催するのは並大抵なものではありません。2009年から組合組織に加わりレベルアップと同時に運営費もかかるようになりましたが、始めた当初から考えると、この15年間で大きく飛躍したと思っています。現在では年間10週から15週間分の演奏を得て、団員とともに小学校でオーケストラ紹介や指導も行っています」と話す。

 VSO終身名誉コンサートマスターの長井明さんも、VMOのコンサートマスターを務める傍ら、後輩の指導にあたっている。

 

第九を全楽章

 2011年より毎年、日本で年末に『第九』を指揮しているケン・シェさん。当初は1時間以上にわたるこの曲のために体力トレーニングを始めた。

 オーケストラにソロ歌手、合唱団が加わる大規模なスケールの作品。この日も額に汗を光らせながらタクトを振った。後半で合唱が始まると、迫力が場内に広がっていく。歓喜に満ちた歌声と盛大な演奏は、スタンディング・オベーションで幕を閉じた。

 「団員の中にもベートーベンの交響曲第九番『合唱付き』を全楽章演奏するのは初めてという人が多かったものの、オーケストラはよく演奏できたと思います。集中して活気もありました。ソロの4人も、合唱団も、素晴らしかったです。何よりも会場に足を運んでくださったみなさんから受ける応援を感じたことで、15周年を特別なものと受け止め演奏することができました」と、終演後、安堵の微笑を見せた。

(取材 ルイーズ阿久沢/ 写真 Mayowill Photography)

 

1時間以上におよぶ大作を指揮したVMO音楽監督・首席指揮者ケン・シェさん

 

独唱ソリストたち。(左から)ロビン・ドリードガー=クラッセンさん(ソプラノ)、リア・ジゼル・フィールドさん(メゾソプラノ)、スコット・ランブルさん(テノール)、ジェイソン・クリッペンスタインさん(バリトン)

 

バンクーバー・バッハ合唱団

 

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