2017年5月25日 第21号
明治時代の婚礼衣装や留袖、貴重な加賀友禅など美しい着物が、5 月20 日から9 月3 日まで、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館の日系博物館で展示される。期間中は絞り染めやこぎん刺しのワークショップなど、着物に関連する日本文化の美しさに触れる企画が予定されている。5 月20 日、日系センターで、この企画展のオープニングレセプションが開かれた。
岡井朝子総領事(左から8 人目)、原馬仁美さん(同9 人目)と彩月会のみなさん
着物を通して日本文化を伝えたい
今回の展示物のキュレーターを務める原馬仁美(はらまひとみ)さんは、「日本の家族が着物に関係したことをしていまして、ずっと身近に着物がある生活をしてきました。カナダに来てから、そういった日本文化が自分にとって、いかに大切だったかということに気がつきました」と話す。ビクトリア在住で、着物のレンタル、販売、着付けのサービスなどを提供するほか、着物や日本文化を紹介する展覧会のキュレーターを務めた経験も多い。今回の展示物について「ほとんどが私の家族のコレクションで、日本の実家で保存しているものを持ってきました。博物館のスペースもあまり大きくないですし、なるべくきれいなものを見ていただきたいなと思いました」という。また展示では婚礼の際に着る振袖や留袖など華やかな雰囲気の着物が目につく。「日本の結婚式ですと、白無垢や打掛というのが知られていますが、これは割と新しい伝統でして、100 年も経ってないんですね。文化が変わることによって着物も変わっていきます。長い着物の歴史というのも、展示を通してお伝えできたらと考えています」と語った。
着物が好きな人は必見の企画展
オープニングレセプションでは、まず原馬さんが着物と日本の自然や季節との調和、技巧やデザイン、染色や製織、着物の構造とリサイクルなど、着物に関するさまざまなトピックで話をした。その後、ギャラリーツアーが予定されていたが、会場を訪れた人が予想以上に多かったため、代わりに原馬さんが展示物について口頭で説明することになった。
式典は日系博物館館長のシェリ梶原さんが司会を務め、日系センター理事長の五明明子さんと同センター事務局長のロジャー・レミレーさんが挨拶をした。そして、岡井朝子在バンクーバー日本国総領事が、着物は日本文化の美しさを伝えるもののひとつであり、日本では「和装」のユネスコ無形文化遺産登録を目指す活動が行われていると述べた。そして、今回の展示で貴重な着物を多くの人に見てもらえることは喜ばしいと語った。最後に原馬さんが、日本人は日常生活において着物をほとんど着なくなっているとはいえ、着物は日本人と日本文化のコアエレメントであると思うと話し、着物を通して日本文化の美を紹介することができれば、うれしいと述べた。
その後、彩月会による優雅な踊りが披露された。会場ではお饅頭とお茶がふるまわれた他、着物の販売もあった。来場者は明治や大正時代の着物が中心の展示物を興味深く眺め、着物の製造行程を説明するVTR にじっくりと見入っていた。今後、着物の歴史についてのトーク、絞り染め、こぎん刺し、細工物のワークショップが予定されている。また、6 月10 日には日系文化センターのファンドレイズとして、着物がテーマの和風アフタヌーンティーを開催する。
イベントの詳細はウェブサイトで確認できる。 www.nikkeiplace.org
(取材 大島多紀子)