あの大けがから2カ月、この日工藤は控えながら試合復帰を果たした。チームはその間、白星に見放され、なかなか抜け出せない悪循環にはまっている。この日は4月9日の黒星を最後にMLSで負けなしのコロラド・ラピッズとの対戦。工藤の復帰と共にホームで久しぶりの白星を勝ち取り、悪い流れを断ち切りたいところだった。

 

「ベンチでしたけど、復帰の第一歩としては良かったと思います」と元気な姿で手を振る工藤

 

7月9日(22,120)
バンクーバー ホワイトキャップスFC  2 - 2  コロラド・ラピッズ

試合開始10分、キャップスDFワストンのゴールで先制。後半に入りラピッズが同点に追いつくも、87分にキャップスMFテチェラがPKを誘い、自らゴールして2−1。しかしアディショナルタイムに入った4分後ラピッズが土壇場で同点に追いついた。

 

またしても悪夢のアディショナルタイム

 またしても悪夢は試合終了間際に待っていた。2−1のリードで迎えた5分間の後半アディショナルタイム。ラピッズは71分にDFミラーが退場処分となり、10人での防戦を強いられていた。そんなラピッズの執拗なディフェンスから生まれたキャップスMFテチェラへのPKでキャップスは再び勝ち越した。あとはこの1点を守りきれば5月11日以来のホーム白星を手に入れられるはずだった。

 しかし94分。積極的に攻めていたキャップスの一瞬の隙を突く形でラピッズがゴール。その30秒後に終了のホイッスル。ホーム白星が掌からスルリと滑り落ちた。

 ロビンソン監督は開口一番「今日はラピッズが勝つべき試合だった」と語った。落ち込んでいるはずの選手に冷や水を浴びせるような言葉だが、この日のキャップスは1点先取後、完全に精彩を欠き、ラピッズが一方的に攻めた。

 流れが変わったのはレッドカードから。思わぬ形でスイッチが入ったが、それでも勝ち星には届かなかった。

 6月29日のACC(アムウェイ・カナディアン・チャンピオンシップ)決勝戦では、やはりアディショナルタイムに入り、試合終了30秒前にトロントFCにゴールを決められ、ボヤジャーズ杯優勝を逃した。6月25日フィラデルフィアでのユニオン戦でも3−2で勝利はしたものの、アディショナルタイムに無駄な失点をしている。キャップスGKウーステッドは「これらの試合から精神的な強さを構築する必要がある」と語った。

 

工藤、2カ月ぶりに試合復帰

 この日唯一の明るいニュースはFW工藤壮人が控えながらも試合復帰を果たしたことだ。5月11日の大けがから2カ月、ようやくユニフォームを着て再びチームに名を連ねた。この日は結局出場機会はなかったものの、ファンから大きな声援を受けていた。

 「(試合が)終わってからの練習もそうですし、アップの時も、出ていく時も、声を掛けてもらって、非常に期待を感じます」と工藤。「その期待にしっかり応えなきゃいけないなっていういい緊張感もあり、まずは早い段階で(試合に)出て、僕自身は元気だよっていうことを表現できればなって思います」。

 ようやく復帰した第一戦でプレーしたくて、うずうずしていた。「このいつ呼ばれるか分からない感覚とか、1−1とか、拮抗した場面で僕自身点を取りたいなっていう、なんだろ、久しぶりの感覚を楽しみながら、そこでまた出番がなかったっていう悔しさも含めて、次の試合もいけたらなって思います」。

 ケガを負った恐怖心はない。あとはピッチで暴れるだけだ。チームは今、FWリベロが移籍し、この日好調だったMFマニーもケガで退場した。チームは得点力のあるフォワードを渇望している。「フォワードが点を取るところ、そこがどうしても必要かなって思ってるんで」。

 チームは白星欠乏症から、なかなか抜け出せないでいる。最後にホームで勝ったのは奇しくもあの5月11日負傷した試合。その後はアウェーで2勝のみ。工藤の活躍にチームの上昇気流がかかっている。

(取材 三島直美 / 写真 斉藤光一)

 

7月のホームゲーム
7月16日(土)7pm  オーランド・シティSC戦
7月19日(火)7pm  クリスタル・パラスFC(プレミアリーグ)戦

 

 

先制点を決めたDFワストン(中央)。ゴール後は感情を爆発させ、大きくガッツポーズ。6月29日ACCトロント戦での悪夢の責任を感じていたに違いない

 

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