試合前、BCプレースが大歓声に沸いた。会場の大画面には元気な姿でファンに手を振る工藤の姿が映っていた。この日は、あの衝突事故が起こったシカゴ・ファイア戦以来のホームゲーム。あの悪夢を振り払うような工藤の笑顔で試合は始まった。

 

レッドカードを見せられ驚くキャップスMFモラレス(右)と、すでにレッドカードを受けぼう然とするダイナモMFアレックス(審判の左側)

 

4月27日(18,836)
バンクーバー ホワイトキャップスFC  1 - 1  ヒューストン・ダイナモ

先制はダイナモ。20分、左から抜けたDFビースリー(#7)がそのままゴール。前半を1ー0で折り返した。ホワイトキャップスは52分にFWリベロ(#29)がゴールネット右隅ギリギリに決まるスーパーシュートを決め同点。試合はこのまま引き分けた。

 

再三の好機も得点できず

 後半に入り、再三の得点好機もゴールに結びつかなかった。結局今季2ゴール目となるリベロの得点のみに終わり、現在西カンファレンス最下位のダイナモに引き分けた。  試合後ロビンソン監督は「相手の方が最初の20分は完全に押していたし、先取点を取る資格もあった」と語った。しかしそこから盛り返し、特に後半はいい動きをしていたが「勝てなかったのはツキがなかった」と振り返った。相手GK好守に何度も阻まれた。

 前半はなかなかエンジンがかからず、後半に入って動きが良くなるというのは2試合続けて。その理由を聞かれると「説明できない」と苦笑。「今のチーム状態なのかもしれないとしか言いようがない。もっと努力しなくては」と反省した。

 それでも何とか引き分け同点に。5月は3勝1敗1分とまずまずの成績。5月終了時で15試合を消化、6勝6敗3分とし、勝ち点21で順位も西カンファレンス3位にまで浮上した。6月は2試合がACC(アムウェイ・カナディアン・チャンピオンシップ)で、MLSは2試合のみ。次回のMLSは6月18日。元ホワイトキャップス小林大悟が所属するニューイングランド・レボリューションとBCプレースで対戦する。

 

両チーム同時レッドカードに疑問の声

 前半も終わりに近い42分。両チームの選手が同時にレッドカードを受けた。ダイナモMFアレックス(#14)とホワイトキャップスMFモラレス(#77)。リプレーを見る限りでは小競り合いとなり、手がお互いの顔に当たっているように見える。しかし、ロビンソン監督によるとモラレスは「顔には触れていない」と言っているという。

 ダイナモのコイル監督は、レッドカードについては審判を批判しないことにしているので特にコメントすることはないとしながらも、「レッドカードの後はゲームプランを変える必要に迫られた」とゲームの流れに影響が出たことを暗に語った。ロビンソン監督は直接的に「レッドカードはゲームを台無しにする」と力を込めた。「あのプレーでなぜレッドカードだったのか理解できない。ただリプレーを見ていないので、はっきりしたことは言えないが」と語った。

 今季はリーグ全体でもレッドカードが増えている。ホワイトキャップスは今季これが2回目。MLSの『選手を守る』一環とされているが、勝っても負けても後味の悪さが残ることは間違いない。

 

工藤がBCプレースに

 工藤が元気な姿をファンの前にみせた。試合が始まる直前、熱狂的なファンが陣取るコーナーに姿を現し、大歓声が起きる中、笑顔を見せながら両手を大きく振った。

 5月11日シカゴ・ファイア戦で、顎を骨折する大けがを負ったあのプレーから2週間あまり。ホワイトキャップスのブレザー姿で、外観からは特にあの惨劇を思わせるようなプロテクターもなく、にこやかに何度もファンに向かってお辞儀をしていた。

 ただ実際にはまだ顎にワイヤーが入っており、話すことはできないのだという。そのためコメントはなかったが、元気な姿が見られただけでもファンはひと安心だろう。

 

6月のホームゲーム

 残念ながら日本人対決ということにはならなかったが、今月は18日の元ホワイトキャップス小林大悟が所属するニューイングランド・レボリューション戦に注目。

6月8日(水)7pm オタワ・フューリー戦(ACC)
6月18日(土)4pm ニューイングランド・レボリューション戦                    

(取材 三島直美 / 写真 斉藤光一)

 

 

ファンに向かって手を振りながら笑顔をみせる工藤

 

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