現在、バンクーバー在住の福本衣季子さんは、帝国ホテルで客室、レストラン、ルームサービスを経験。結婚退職、出産を経たのち、帝国ホテルの子会社に入社して、和食店の女将として活躍した。2005年には独立して、スタッフ教育の会社、オフィスRanを起業、さらに2012年には『帝国ホテルで学んだ無限リピート接客術』を上梓(じょうし)している。

 

 

カナダで日本料理の食卓作法を広めたい

 「カナダに滞在している間にBC州でお箸の持ち方、所作をはじめ、日本料理の食卓作法について広めたいと思っています」おもてなしのプロ、福本衣季子さんは凛とした笑顔で語った。「私はいずれ日本に帰るので、人から見られている『見られ美という価値観』を置いて帰りたいですね」

 聞けば福本さんは、家族の転勤に伴い、2015年10月にバンクーバーに来たばかりだという。この機を利用してBC州に暮らす人たちに、日本料理の食卓作法や日本のおもてなしを知ってもらいたいと目を輝かせた。たとえば“お箸の持ち方、所作”の指導は、実技と講義があり、実技としてはスプーンや箸の持ち方、上げ下げ、帯の外し方、割り箸の割り方などを。講義では、箸のタブーや箸の名称と目的などを扱う。福本さんは「最近、お箸をちゃんと持てない人が多いのです」と語る。しかし、ちょっとしたコツですぐに持てるようになるという。恥ずかしながら記者も、そんなお箸をうまく持てない一人。子どもの頃から苦手意識が強かったが、取材中、5分ほどコツを教わることで持つことができるようになった。「お箸の講座はすでに自宅でお教えしています。お箸の正しい持ち方だけでなく、6つの所作も指導します。たとえば、レモンが出てきたら、どうしますか?」手で絞りたくなるものだが、「お箸を使うと周囲に飛び散ることなくきれいに絞れる」という。約1時間のクラスを4回、修了試験もあり、合格すると修了証が渡される。

 

リピーター獲得の秘訣を説いた著書

 おもてなしとホスピタリティー教育の会社、オフィスRanの代表でもある福本さんは著書『帝国ホテルで学んだ無限リピート接客術』で、接客術について説いている。無限リピート接客術とは“おもてなしとホスピタリティー”の実践により、スタッフからのコミュニケーションでお客さまとの絆を築き、リピーターを獲得。さらに個々のお客さまにとっての「特別」になることで、友人、知人に紹介してもらえる存在になるというものだ。“お客さまがお客さまを呼ぶ”の循環により“無限リピートのループ”が始まり、“ご縁は無限に広がっていく”。

 また、福本さんが学んできた帝国ホテルの精神や、実践編として、エピソードを含めて接客術についても紹介している。福本さんが帝国ホテルで学んだ最たるものは、『第二章 私が学んだ帝国ホテルの精神 魔法の七カ条』のサブタイトルにある“社員を愛する経営陣、会社を愛する社員たち”だろう。経営者は、お客さまの前にまずスタッフを大切にする。そうすれば自分が大事にされたように必ずスタッフもお客さまを大切にしてくれる、さらにはそのお店のために一生懸命働く。すなわち、サービスの良い、質の高いお店になる。だから、お客さまからも愛されるというわけだ。

 帯には「予算ゼロ円であなたのお店にリピーターをつくる!」とあるが、サービス業に限らず仕事をする上、さらには子育て、人間関係などにも参考になるようなアイデアやエピソードも満載だ。たとえば、実践編における“ひと呼吸”置くこと、“歩み寄りの姿勢”。ひと呼吸の間を置くことについて、福本さんは「無理な要望を受けたとき、即答で却下するのではなく、5分程度時間を置くように」と語っている。「それはお客さまに不快感を与えないためだからです」

 福本さんの考え方や姿勢は、さまざまな場面で活用できるだろう。

 福本さんはコスモスセミナーで「日本料理のテーブルマナー」の講師を務める予定だ。  

日時:6月8日(水)10:20〜13:00
場所: 日系文化センター・博物館1階イベントホール  
参加費:10ドル(非会員)  
申し込み先:This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.        
Tel: 604-652-5984

(取材 西川桂子)

 

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「日本料理のレストランで美味しい食事をいただきながら作法を学ぶお食事会も開催していきたいですね」と抱負を語る福本さん

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