「日本が好きです。だから、もっとお役にたちたい」そんな素朴な思いで立ち上げた弁護士事務所がある。CHUNG&ASSOCIATES。アメリカ人のスティーブ氏とカナダ人のブレンナン氏。それぞれ、かなり強い親日家。日本人の気質を客観的にみつめ、カナダ特有の法律をにらみ、解決策を見出し、お役にたちたいと、情熱を燃やすブレナン氏に話を聞いた。
体調をくずした時、医者に相談する… そんな感覚で、私たちに。
日本人は、訴訟などの法律問題を敬遠しがちだ。ちなみに、弁護士の数は、アメリカ350人の人口に対し1人、日本は8,500人に1人といわれている。アメリカが、『訴訟大国』といわれるゆえんだが、カナダの場合それほどにはないにしても、訴訟は身近なものだ。 「法律は、法律をよく理解している者に味方する」とはよく言われることだが、日本人にとって、法律で割り切ることになにか抵抗感がある。少々困ったことがあっても弁護士事務所は、敷居が高い。それは、カナダに住む日系人にとってもマインドは同じだろう。 そんな日本人気質を十分理解し、ここカナダの異文化のなかで生活、あるいは小さなビジネスをスタートするうえで直面する法律問題の窓口になりたいという。「初回相談1時間無料」、といっても、時計を見ながら聞くのではなく、じっくり相談内容を聞き、その後の最善の方策を考える、「病院の初診」のようなものだろうか。「自分で、そんなに抱え込まないで、気軽に相談していただきたい。こじれる前に…」とはブレンナ氏。まさしく、ファミリードクターのよう。
カナダは各州で法律に違いがあること、また、突然に変わったりすることを ご存知だろうか。
例えばBC州で、つい最近、家族法が突然変わったことをご存知だろうか。「結婚していなくても2年間の同棲生活で財産をシェアできることや、離婚の時の親権は、子どもにとってどちらが幸せかによって決められる」など、新しい法律が制定されている。これなど、法律の専門家ぐらいしか変わることを予測していなかったそうだ。そうした実態を知らずして、解決しようとしても無理なことは明白だ。 また、交通事故などで、うっかりした発言も厳禁。すべてが証拠として扱われるので、注意が必要だ。もし、軽度の事故の加害者になっても、自分で示談にしようなどと考えず、ICBCと弁護士に報告・相談するのが先決。このときの判断ミスで、必要以上の弁償を強いられたケースは多いようだ。この点、日本国内とはずいぶん事情が違う。「まあまあ…」という『おもんばかり』の文化の入り込む余地はないと思うべきなのだろうか。そんなことを考えるより、「悩むより、専門家にすぐ相談」ということだ。
両氏ともに筋金入りの親日家
スティーブ氏の祖父は、日本で教育を受けたそうで、日本や日本人についてとにかく良く話してくれたそうだ。また、ブレンナン氏はグレード7のころ、神戸に住む日本人とペンパル通信を始めたことで日本を知り、2004年の外務省主催の「JETプログラム」で長崎へ招かれ、日本中を旅したという。 若かりしころの感性に響いた心情は、今に続き、「お役にたちたい」という、誠に日本的心情なのである。そして、二人の笑顔の裏の真摯な思いを見て取ったインタビューであった。 (取材 笹川守)
2人の弁護士が多岐にわたる分野の弁護にあたる。 なかでも、家族法、ICBC交通事故、刑事訴訟(民事・刑事訴訟)に注力している。
● 弁護士STEVE・CHUNG
ブリティッシュコロンビア州弁護士会メンバー/アルバーター州弁護士会メンバー/カナダ弁護士会メンバー/カリフォルニア大学・バークレー校(専攻:政治学部)卒業/ビクトリア大学法科大学院卒業
● 弁護士BRENNAN J, CLARKSON
ブリティッシュコロンビア州弁護士会メンバー/アルバーター州弁護士会メンバー/非営利弁護士組合メンバー/カナダ弁護士会メンバー/アルバータ大学(専攻:法学部)卒業/ブリティッシュコロンビア大学(専攻:心理学B.A.)卒業
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