〜日本人介護士の派遣にさらなる意欲〜

バンクーバーのダウンタウンで8月30日、バンクーバー・ホーム・ケア・ネットワーク(以下VHCN)の設立1周年感謝パーティーが開催された。

 

シニアのための情報資源を紹介すると同時に地域での相互扶助の関係作りの大切さも伝えた

 

シニアの生活の質向上を目指して日本人介護士を派遣

 VHCNは日本人介護士による介護サービスを提供する会社として昨年10月に創業し、登録された介護士・ヘルパーの派遣を開始している。

 この日のパーティーには介護サービスに関心を寄せるシニアや介護士、同社の活動を応援する人々など約50人が集まった。VHCN代表の阿部山優子さんの威勢のいい挨拶で始まり、会食後は余興にゲームを実施。続いて阿部山さんと仲間による体当たりの漫才も披露された。こうして場が温まった後、インターネットを通じて日本の介護専門家とつなぎ、日本の高齢化と介護の状況を語ってもらい、会場との質疑応答を実施。 最後に阿部山さんが同社の事業内容や当地のシニアのための情報資源を紹介しながら、自身の問題意識や事業にかける思いを熱く語った。

 

「生きてて良かった」と思って過ごせる高齢者の生活作りに

 同社を立ち上げた阿部山さんはずっと医療畑を歩んできた。東京都の武蔵野日本赤十字病院で看護師を経験後、ケベックの大学で健康促進の分野の修士号を取得。その後、公衆衛生隊員としてカンボジアに渡った。10年前にカナダへ移住後は、正看護師として病院で働きながら地域の緩和ケアにも当たり、介護士のスーパーバイザーも経験してきた人物である。

 カナダの看護師として、転倒による怪我で入退院を繰り返す独り身の高齢者たちを何人も見てきた。「治療して帰せばいい」という病院の中で、次第に「自立していきいきと生きる高齢者を増やすことに自分の力を使いたい」との思いが募ってきたという。

 それから仲間を集め、カナダでの医療や介護の勉強会を開いた。多くの参加者から「住み慣れた家で老後の生活をしたい。そのために経験のある日本人介護士を家庭に派遣するシステムを」との要望を聞いた。その需要の多さと切実さを認識し、阿部山さんは看護師の職を辞して同社設立に踏み切った。

 

女性への経済面での支援、地域での相互扶助の推進も

 VHCNでは身体介護(移動、着替え、食事、排泄など)には元看護師か有資格の介護士を、生活援助(調理、洗濯、掃除など)には一般のヘルパーを、とサービスを区別。介護の依頼を受けると、最初に阿部山さんが依頼者宅に出向いて相談に乗り、介護計画を立て、介護士もしくはヘルパーを派遣する。その後、月に1度、認定看護師が出向いて評価、修正を行う流れだ。現在約20人の介護スタッフが登録されており、メトロバンクーバーとビクトリアを拠点にしながら、スタッフの出向ける範囲でサービスを提供している。

 阿部山さんは「自社の活動を通じて、介護を通じたシニアへの支援だけでなく、女性の就労の促進も図りたい。高齢者の支援といっても私たちの会社だけでできることは限られていますから、地域の自助努力で、女性の会など作って月に1度でも集まって、お互いを見ていく関係作りも推進できれば」と語る。

 「優子さんの知識と行動力とハートにひかれ、VHCNを盛り立てようと思いました」と、同社マーケティング担当の佐藤陽子さん。そして佐藤さんと同じく、阿部山さんの志に共鳴した人たちが、この日のパーティーでゲストのもてなしのために細やかに立ち回った。

 「独り身にとって老後の生活は切実な問題。阿部山さんのような方が事業を立ち上げてくださったのは本当にありがたいこと」と、参加者のマッカーサー啓子さん。「貴重な存在なので、利用することで(同社を)盛り立てることになれたら」との声も。

 日本人介護士による「真心、気配り、思いやり」で、高齢者の生活に潤いをもたらしたいと情熱を投じる阿部山さん率いるVHCNに、期待と支援の思いが集まっている。  

 

(取材 平野香利)

 

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