2018年6月28日 第26号

 前回の連載では、アトピー性皮膚炎の起源と発病原因について説明した。日本皮膚科学会のガイドラインに提示されたアトピー性皮膚炎の定義とは、「増悪・寛解を繰り返す、ن١痒のある湿疹を主病変とする疾患。患者の多くはアトピー素因を持ち、因みに、①家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、或いは複数の疾患)、又は、②IgE抗体を産生しやすい素因がある。」

 アトピー性皮膚炎の診断基準について、同ガイドラインは、1.かゆみ、2.特徴的な皮疹とその分布、3.慢性・反復性の経過で、三つ全て該当するものだと定めている。

 まず、痒みはVAS (visual analog scale)、「主観的な掻痒程度の指標」を用いて評価することが可能。100%が最も痒みが強い時、0%が全く痒くない時として、何%かを測る。患者の主観感覚に頼るため一般的な指標になりにくいが、痒みの改善度を明白化するのには非常に役に立つ。また、掻痒だけではなく、掻痒によって生じる睡眠障害における度合の評価もこの指標が応用される。

 次に、特徴的な皮疹とは、急性病変として、紅斑、湿潤性紅斑、丘疹、漿液性丘疹、鱗屑、痂皮が認められる。慢性病変になると、浸潤性紅斑・苔癬化病変、痒疹、鱗屑、痂皮等多彩な形で現れる。その分布は、大まかに特徴的な左右対側性である。また、好発部位は、前額、眼囲、口囲、口唇、耳介周囲、頸部、四肢関節部と体幹。特に肘や膝の関節の内側、首など、衣服の摩擦などの刺激を受けやすい部位。年齢別で分けると、乳児期は頭、顔に始まり、しばしば体幹、四肢に下降する。幼小児期では、頸部、四肢関節部の症状が多く、初期に皮膚の乾燥がよく観察され、「アトピックドライスキン」とも呼ばれる。関節の内側を中心に赤味やブツブツなどの病変が出現し、肌は乾燥してザラザラした触感に、鳥肌のようになりがち。既に痒みのある肌を掻きむしることによって、皮膚がゴワゴワして分厚くなって苔癬化になることもある。思春期に入ると、上半身(頭、頸、胸、背)に皮疹が多発して激しい掻痒感を伴う傾向がある。大人の場合は概ね子供と似たような症状が出現し、中には、顔の症状が繰り返しを重ね、難治化に陥ることも稀ではない。なお、悪化によって全身が真っ赤な紅皮症の状態になって、重症化するケースもあり得る。

 最後に、慢性・反復性の経過では、一般的に乳児では2カ月以上、その他では6カ月以上症状が続いたことを慢性とされる。

 アトピー性皮膚炎の治療方法は、前篇で述べたように、西洋医学、東洋医学問わず、その病態に基づいて、①薬物療法、②皮膚の生理学的異常に対する外用療法・スキンケア、③悪化因子の検索と対策、の3点が基本になる。これらはいずれも重要であり、個々の患者ごとに症状の程度や背景などを勘案して適切な組み合わせが必要。また、症状は、季節、体調、ストレス、生理周期などによっても大きく変化するので、患者さんの状態の変化に注意し、その時々で、西洋医学なら、抗アレルギー薬やステロイド外用薬使用量の調整、東洋医学なら、鍼灸や漢方の処方を変えながら治療のゴールを目指していく。

 鍼灸治療は実に古来から使われた有効性のある治療法で、個別の体質と内蔵機能や環境などとの関連を配慮して内外の治療が施される。経絡理論を用いる鍼灸治療の目標は、免疫反応を正常に近づけ、掻痒感、皮疹を軽減し、随伴している不定愁訴を解消すること。臓腑の機能が低下したために免疫反応、抗原抗体反応に異常を来たすと判断した場合、臓腑の力を増強する経穴を選択しなければならない。

 東洋医学的に、痒みや炎症はやと考え治療のアプローチをする。同じ湿疹でも外来の湿熱が皮膚に浸潤して湿疹を引き起こす「湿熱浸淫」タイプ、胃腸の機能が衰えて体内の毒素や湿気を上手く排出できず皮膚に蓄積した「脾虚湿蘊」タイプと細かく分類される。ジュクジュクしている皮膚は湿熱と考えられ、こういうタイプの鍼灸治療には曲池、合谷、豊隆、陰陵泉、三陰交等、健脾(胃腸機能をよくさせること)作用のあるツボを選び、施術を行う。カサカサして夜中に痒みが出る皮膚を血熱と判断した場合、治療には血海、膈_}、曲池など作用のあるツボを用いる。

 なお、いくら炎症を抑えても、皮膚を丈夫にしていかなければ新たな炎症がまた現れる。アトピー性皮膚炎の基本は皮膚の乾燥、皮膚表面の外壁が弱く、刺激を過剰に受けやすい状態である。乾燥して艶がなく、皮が剥けて、皮膚が厚みを増した症状は東洋医学ではとみなして、鍼灸治療には足三里、三陰交、脾+\、太白、公孫など作用のあるツボを選んで皮膚に潤いを与え皮膚状態を改善していく。一般的に、第一段階の治療で皮膚の赤み・痒みが落ち着いたとしても、症状を繰り返さないためには第二段階の治療、ちなみに保湿とスキンケアをしっかり行っていく事がとても大事だと思われる。

(次回に続く)

 


医学博士 杜 一原(もりいちげん)
日本皮膚科・漢方科医師
BC州東洋医学専門医
BC Registered Dr. TCM. 
日本医科大学付属病院皮膚科医師
東京大学医学部漢方薬理学研究
東京ソフィアクリニック皮膚科医院院長、同漢方研究所所長
現在バンクーバーにて診療中。
連絡電話:778-636-3588 

 

 

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