2018年2月15日 第7号

今回のお話は、前回の、「全員合格か! 全員不合格!」の続きです。

 初回のセミナーで親御さんがお子さんを必要以上に強く叱っているのが気になっていました。いくら子供といえども大勢の前で叱責されるとプライドが傷つくものです。

 そこで今回のセミナーをきっかけに、お子さんを叱ることが減ってくれればいいと思い、以下のような課題をお願いすることにしました。その課題に取り組むことで、何かを気付くきっかけになってくれたら親子がより円満になるのではないかと考えたからです。課題は2週間実施してもらい、その結果次第では多くのお母さんに広めていきたいと思っています。

課題:自分の子供にお願いをするときは「さん」付けで呼び、丁寧語を使ってみてください。

結果:丁寧語を使うことによって、今までより、気持ちよく動いてくれるようになりました。今まではすぐ動いてくれないと怒っていましたが、怒らなくてもよくなりました。また、小さいからといって甘くみるのではなく、大人の人と同じ気持ちで接するようになりました。今後も続けていきたいです。

 

★福本の経験

 私は子供の頃、家族や身内から呼び捨てで呼ばれていました。母亡き後、一度だけ伯母から「房子さん」と呼ばれ用事を頼まれました。初めて「さん」付けで呼ばれたのでうれしくて少し驚きましたが、子供ながらにも気分が良かったのを覚えています。

 その20数年後、私は逆の立場になりました。仕事の都合上、帰りが夜中になってしまいますので、朝は夕飯の仕度をしていきます。しかし時々お米をとぐのを忘れるときがあります。そこで家に電話をして、娘にお願いをするのですが、その時は偶然中学1年生の娘が出ました。そこで「有子さん、申し訳ないけど、お米を3合といで30分後にスイッチを入れてもらえませんか」と私の子供の時を思い出し、丁寧にお願いをしてみました。すると娘は私の言い方がいつもと違っていたことに驚いていましたが、静かな声で「は、はい…」と快く返事をしてくれました。

 また、今から20年以上も前の事ですが、私がレストランで働いていた時のことです。食事を終えたご年配と、やや中年の女性との会話を耳にすることがありました。お二人とも、良家で育った人たちのように思える会話です。

 「ね〜、○○さん明日どうなさるの?」

 「そうね〜、明日はお買い物にでも行ってみようと思うのよ。お母さまもご一緒にいかがですか」

 お支払いの感じから実の親子のようでした。親子の間柄であっても、さらりと丁寧語を使っていることに驚いてしまったので今も記憶に残っていました。

 その反対に、最近のある職場でのバックヤードでの会話です。「ねー。ホールに誰もいないから出てて!!」そばで聞いていた私は、その話し方がぞんざいに感じたので「悪気がないのはわかっているけれど、もう少し穏やかに話してくれてもいいのにね」と、言われた人を慰めました。

 そして、私達夫婦のことです。私はお互いの意見が食い違うと語尾が強くなってしまうことがあります。しかし、主人は「こうじゃないんですか?」「こうしてくれませんか?」と口論になりそうなときは、必ず丁寧語を使います。すると私も冷静さを取り戻し、丁寧に応えるように意識が向きます。例え、口論になってもあと味がいいのです。思い出せば主人の母が家族にお願いをするときは、丁寧語を使っていました。

 どうやら言葉使いは、人の感性を育む要素のようです。そうなると自分の子供だからこそ「さん」付けで呼び、お願いをするときは丁寧語を使って、感性を育んでいきたいものです。

 


 

著書紹介
2012年光文社より刊行。「帝国ホテルで学んだ無限リピート接客術」一瞬の出会いを永遠に変える魔法の7か条。アマゾンで接客部門2位となる。
お客様の心の声をいち早く聞き取り要望に応えリピーターになりたくさせる術を公開。小さな一手間がお客様の心を動かす。ビジネスだけでなくプライベートシーンでも役立つ本と好評。

福本衣李子 (ふくもと・えりこ)プロフィール
青森県八戸市出身。接客コンサルタント。1978年帝国ホテルに入社。客室、レストラン、ルームサービスを経験。1983年結婚退職。1998年帝国ホテル子会社インペリアルエンタープライズ入社。関連会社の和食店女将となる。2005年スタッフ教育の会社『オフィスRan』を起業。2008年より(社)日本ホテル・レストラン技能協会にて日本料理、西洋料理、中国料理、テーブルマナー講師認定。FBO協会にて利き酒師認定。

 

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