2016年11月3日 第45号

前回に続き、今回も「いただき方」についてです。 前回は①「いただく順番を考える」、②「残りの景色を考える」でしたね。

皆さんはこれまでに、「どのようないただき方が綺麗なのか」、なんて意識したことがありましたか? 人は意図的に意識するだけで一気に成長するのだそうですよ。  

 

③ 中央にのっていてもよけてからいただくものがある

 ⇒焼き魚などあしらいとして「はじかみ」が魚の中央に乗っている時があります。上に乗っているので、つい最初にいただくのかと思いがちですが、はじかみはお魚をいただいたあと生臭さをとる目的を持っていますので、お箸で脇に移動させてから最後にいただきます。また煮物などには「青み」として「絹さや」が中央にあったりしますが、これも始めにいただくのではなく、脇によけておきます。  

 

④ 小さい器は手に持っていただく

 ⇒日本料理は手を使ってもよいことになっています。手のひらに乗る大きさのものは、いただきやすいように手に持っていただきます。  

 

⑤ 器に口を付けてもよい

 ⇒「わぁ〜この煮物のだし汁おいしいわね〜」「えっ? でもほんとは器に口をつけてもいいものかしら? これって作法に反していないのかしら?」これは実際に和食店でよく受ける質問です。中国料理や韓国料理はお箸とスプーンを対に使う文化ですが、それに対して日本料理はお箸だけを使うため、器に口を付けるという独自の文化を作りました。先人は他国との差別化を図ったものと思います。  

 

⑥ 蓋がしてあるものは、蓋をして返す

 ⇒蓋付きの蓋をどのように扱えばいいのか、この疑問が一番お客様を悩ませているようです。私も現場で仕事をしていた頃、正確なことがわからずきちんと教えることができませんでした。その時よく見かけたのが、蓋を裏返しにして戻す方と出されたときと同じようにして戻す方でした。蓋を裏返すお客様はいただき終えたことを無言で知らせようと、お客様なりの工夫をしていたようです。でもそれはNGです。基本的には見た目の美しさを大切にします。いただき終えたら、お膳の奥に置くと終了の合図になります。  

 

 「すべてをおいしく綺麗にいただく」ということは簡単なようですが、一夜漬けでできるものではありません。ですから少しずつ少しずつ、イメージを働かせながら…。もし忘れたり、間違ってしまっても次回は忘れないようにしようとする心がけが大切です。このようなことを繰り返していくうちに徐々に身につくものです。かつての私もそうでしたから。  

 以上が前段としてのいただき方の概論になります。  

 世界には西洋料理や中国料理など様々なその国のテーブルマナーがあると思いますが、一番難しいのは日本料理のテーブルマナーではないでしょうか。それだけに、学ぶ意義は大きいと思います。まだまだ細かいことはお伝えしきれておりませんので、今後は料理の写真を見ながらさらに細かく説明していきます。  

(文 福本 衣李子)

 


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福本衣李子 (ふくもと・えりこ)プロフィール
青森県八戸市出身。接客コンサルタント。1978年帝国ホテルに入社。客室、レストラン、ルームサービスを経験。1983年結婚退職。1998年帝国ホテル子会社インペリアルエンタープライズ入社。関連会社の和食店女将となる。2005年スタッフ教育の会社『オフィスRan』を起業。2008年より(社)日本ホテル・レストラン技能協会にて日本料理、西洋料理、中国料理、テーブルマナー講師認定。FBO協会にて利き酒師認定。

 

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