2018年5月31日 第22号

 日本語教師養成講座の卒業生のお子さん(グレード8、日本では中学2年生)から、こんななぞなぞを出された。「女の子がカメラを買いに『カメラください』とお店に入りました。するとお店の中に動物が三びきいました、その動物はなーんだ?」である。彼女はカナダ生まれで、もちろん英語が母語だが、お母さんが日本語教育に熱心で、日本語もかなり上手である。

 それは「カメとラクダとサイだよね」と答えたら、「さすが、日本語の先生」とは言われなかったが、すごくほめられてうれしくなってしまった。このなぞなぞは日本語の言葉遊びとして知られている一つである。この「かめらください」を切るところを変えて読むと、「かめ/らくだ/さい」となる。

 これは一般的には「ぎなた読み」と呼ばれている。でもこんな言葉、日本人でも知っている人は少ない。私も日本語教師になってから、耳にした言葉である。これは「弁慶が、なぎなた持って」と読むべきところを、間違えて「弁慶がな、ぎなたを持って」と読んでしまい、それから、切るところ変えて読むことを「ぎなた読み」となったとのこと。

 この「ぎなた読み」で有名なのが「ここではきものをぬいでください」である。これを読んだご婦人が着物を脱ぎ始めた、というお話。「ここでは、きものをぬいでください」と読んでしまったのである。また、「花子さんじゅうごさい」なども「ぎなた読み」の面白い例として取り上げられている。「花子、さんじゅうごさい」と「花子さん、じゅうごさい」ではかなり違う。

 この「ぎなた読み」、漢字で書けば何も面白くないが、確かにひらがなだけで書くと分かりにくく、読み違いの面白みもある。日本語教育においては全く必要ないが、でも助詞の「は」を「wa」と発音させることが、日本語教師としては大事であり、そのトレーニングに役に立つものもある。

 例えば「きみはしらないの?」である。「きみは、しらないの?」と「きみ、はしらないの?」。この場合「は」を助詞と考えるかどうかの違いである。また「はははははいいです」こんな文章を使い、助詞の「は(wa)」を強く意識させている。「母は歯はいいです」これが分かるようになれば、しめたものである。

 この「ぎなた読み」に関して、江戸中期の歌舞伎、浄瑠璃作家である近松門左衛門にこんなエピソードがある。文の句読点をないがしろにする数珠屋の主人に、「ふたえにしてくびにかける」数珠を注文した。そして、主人は「二重にして、くびにかける」数珠を作ってきた。すると近松は注文した数珠は「二重にし、てくびにかける」であると突き返し、句読点の大切さを分からせた、という話である。

 この「ぎなた読み」は言葉遊びとして、いろいろ作られており、飲み会などでのネタとしては、なかなか面白い。「ブラシ忘れた」これをぎなた読みすると…。はい、日本語教師として、精進し忘れないように、頑張る所存です。

 

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