2020年3月26日 第13号

 3月4日は、「世界女性の日」だという。まったく小生のあずかり知らぬことであった。でもよく考えれば、3月3日はひな祭りで、日本では女性の日でもある。特に女の子のいる家庭では、赤い毛せんを引き詰めたひな壇にきれいな着物を着たひな人形と菱餅を飾り、甘酒を飲んだりするのは、日本では昔から女性を大切にしてきたしるしではないかと思ったりもする。内裏雛のようにわが娘も将来、良き旦那と巡り合わせ幸せな人生を送れるように祈ったのかもしれない。

 僕が中学三年生の時のクラス担任の先生のお宅でも、幼い娘さんのためにひな壇を飾られたので、クラスの生徒に遊びに来るように言われた。すると友に「先生の家に行こう!」と誘われた。週末の当日は、小雨のふる寒い一日であったが、バスを乗り継ぎ、二人で担任の松原先生のお宅を訪ねると、ことのほか先生は喜ばれた。寒い春の日であったが、先生の笑顔とひな壇の赤色が印象的であった。

 この松原先生は、小生の小学校時代の五年生、六年生の担任でもあられたが、その後、鉄筋コンクリートの新しい中学校の校舎が出来ると中学校の方に赴任されて、また先生とめぐり合うという不思議な縁(えにし)がある。後年、先生と再会した折、先生が「昔、伊藤君とひな祭りの時に家に来てくれたねえ」と話されたのは、小生もうれしかった。

 同じ高校に進んだ伊藤君は、その後、松原先生が卒業された同じ大学に進み、体育の先生になられた。高校時代に、彼の家へ遊びに行った時、立派なステレオが彼の部屋にあり、舟木一夫のレコードをかけてくれた。やがてお母さんがお茶を持って来てくださり話をすれば、僕らの高校の大先輩で、親子で同じ高校の出身とは、また驚きでもあった。

 さらに少し自慢げに言えば、僕は特別に優秀な高校生では無かったが、先輩の生徒会長が「僕が応援するから、君、生徒会選挙に立候補しないか?」と誘われた。

 普通選挙では、クラスで級長などをしている頭のいい奴が推薦されて、生徒会選挙に出てくると思っていた僕には青天の霹靂であり、中学校時代からの友人である伊藤君に相談すると「俺も応援するからやれ!」 と言う。僕の人生のこまがひとつずつ狂っていくことの始まりであったかもしれない。最初は落選、しかし、二度目もまた先輩から同じ様に言われて立候補して当選したのである。

 ひな祭りが取り持つ妙な友情物語である。

 過日見ていたインターネット番組で、動物行動研究家の竹内先生が言うのには、生物学的には女性側に男を選ぶ権利があるらしい。というのも、女性はいい子孫を残すために健康で丈夫な身体を持つ強い男をとか、食料の餌を見つけることが上手な、つまり経済力のある旦那さんを選択するように出来ているらしいことは、自然界では女性の方が権利が強い様に見える。

 強そうな侍は先を歩き妻は三歩下がって歩くのは、特に侍がいばっている訳ではなく、敵に襲われた場合に妻や子供を守るために女子が男の後からついていくようなスタイルになっている訳で、別に女性を軽視しているわけではない。

 さらに、竹内先生の話によれば、世界の中で統計学的には女性の幸福度ランキングは日本が高いということは、女性の社会的な活躍や地位とは別のように感じられれる。

 僕の妻の場合は、ほぼ専業主婦で、家庭で三人の男の子を育ててきた。そのためか、子供たちは穏やかに素直に育ったのは有難く、今でも感謝の思いに堪えない。

 良い子供を育てることは、女子ばかりの責任ではないけれど、母親の影響は大きかったと思う。女性の人生の醍醐味の一つは、おそらく子育てでなかろうかと思ったりする春の日である。

 


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