2018年2月15日 第7号

 息子がまだ、大学生であった頃(25年ぐらい前のこと)、大相撲の海外巡業がありバンクーバー東部にある会場のパシフィクコロシアムに、一日だけの興行を観にでかけたことがある。

 その頃は、若貴兄弟の絶頂期であったように記憶する。海外でめったに見ることのできない本物の大相撲である。日本から英語の勉強にきている青年も誘い、家族で出かけて、休憩にはビールを買い、青年と酒を飲みつつ楽しく観戦をした。

 勝ち抜き戦の最後は、若貴兄弟の初めての対決戦であった。体の大きな弟貴乃花が優勢に見えたが、長男の僕自身は、何とか兄貴の方に勝ってもらいたい同情があったが、この勝負は弟の貴乃花の勝利であったのは懐かしい思い出である。

 その貴乃花が親方となり、巡業先で弟子の貴乃岩が同じモンゴル出身の横綱に説教と鉄拳の制裁を受けて怪我をするという事故が起きた。相撲ファンとしては、いい男の横綱日馬富士がまた土俵にもどれることを期待していたが、巡業部長の貴乃花は一向に相撲協会の問いかけにも応じず。かたくなに沈黙を守り通す。このニュースを見ている側からすれば、貴乃花の行動は何故かとイブカシク思うばかりであるが、今その事件を振り返れば、貴乃花の運が悪かったという気がしてならない。

 たとえば、過日、新幹線の車輪の台車に亀裂(ひび)が入っているのに博多から名古屋まで走り続けた。すでに大阪駅以前に異常に気づいているにもかかわらず、新幹線が走り続けたのは何故であろうか? 新幹線の側から司令室の異常についての電話が入るが、双方のミスアンダースタンドか新幹線は走り続ける。一つ間違えば、大惨事になるところであった。

 今回の相撲の問題もこのことによく似ているようにも思える。

 暴行を受けた貴乃岩が、事件を大きくしないためにか、親方に多くを語らなかった。本人は何も言わぬほうが男らしいと思ったようである。

 ここが間違いの問題点であったように小生は思う。「沈黙は金、雄弁は銀」のことであろうか、頭を怪我をするほどの暴行を受けていながら、多くを語らない貴乃岩も偉いと思うが、身内である親方はここで判断を間違ったのは、運が悪かったように思えるのは残念である。

 たぶん、貴乃花は、一般人とか暴力団関係の人との喧嘩に巻き込まれた場合のことを考えて警察に連絡をしたのであろうと推察する。

 たとえば、個人的体験で言えば、息子が交通事故で人身事故を起こしたことがある。それは、彼が仕事場の駐車場から、運転して家へ帰ろうとして駐車場前の大通りを右折しようとして、左からの車が途切れるのを見て、車のアクセルを踏むと、人が車の前を横切ろうとしているのに接触をした。相手の若者は、大きな問題はないという感じで、とりあえず息子が自宅まで送り、問題は解決したかのように見えたが、後日、事故にあった相手から足が事故の打撲で歩けないので医者代が欲しいと自宅に電話があり、息子に問いただすと「軽い事故があり、お金を欲しいと言っている。会いに行かないと警察に訴える。」と言う。

 少し不安があり、父親の僕もついて行くと、本人ではなく親類の者だという若者が出てきて、息子にお金を要求している。それで、僕が「警察に連絡をした方がいい。」と言うが、相手は「お前を警察に訴える」と反対に息子を脅かして、近くのキャッシュバンクマシンでお金を下しに行き、500ドルをわたす。ぼくは今後のこともあるので警察に連絡をした方が良いと言う。息子は事件が大きくなることを心配していやがるが、僕が警察に電話をすると、しばらくして警察が来て、事情を把握すると「あなた達は帰ってよいから」と言われ、500ドルの損失ではあったが、ホッとして帰宅するが、後日、また電話がしつこくかかる。

 僕が電話にでて「車の保険屋(ICBC)に連絡をとるから、あなたの医療費も全部面倒みてもらえます」と返事をして、車の保険屋に連絡をすると「全部、私の方でしますから心配しないように」と言われた。

 息子が運が良かったのは、目撃者がいて、その電話番号を貰っていたことだった。

 今回の相撲の事件も親方の弟子を思う親心が、警察の連絡が先になり、相撲協会の連絡が遅れたというのが真相かもしれないが、日馬富士の引退となり、果ては貴乃花自身の理事解任となったことは残念なことである。

 北海道の港で荷揚げの仕事をして足腰を鍛えた先代横綱若乃花が、少年時代には食べ物も少なく、じゃがいもを夏の陽に焼けた砂浜の潮水でゆでて友と食べたというコミック『若乃花物語』を読んだのは遠い昔のことである。

 


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