2019年1月1日 第1号

 「星空が見えないかなぁ」と表へ出た。「うわー 寒い!」、「ワー 綺麗!」満天の寒空にちりばめられたキラキラ輝く、それは美しいお星さま達。この何億という星の一つに『星の王子様』は住んでいるのだろうか?真夜中、今12月5日 朝2:41分暗い夜空、その全面に見事に輝く、お星さまキラキラ美しく散らばっていた。

 終戦後、初の小学校1年生、私達の校舎は焼けてない。近くの焼け残ったお寺の本堂に置かれた、一枚の長い板机の周りに子供達は座り、教科書もなく、全てない、ない尽くしで学校生活は始まった。わら半紙にガリ版刷りの1枚の紙を渡され、それが唯一の教材だった。我が家もまた全て焼かれ、ここでも本1冊ない、ない尽くし。だから、子供の時に本を読む事はほとんどなかった。やがてテレビも電気屋のウインドーに立って見れるようなり、やがて、カラーテレビの時代となった。高校大学時代は本があっても読まなかったなぁ。本に夢中になったのは、文化大革命中香港在住時、ある事情で日本航空のトレーニング社員が我が家に下宿していた。毎年トレーニングでやって来る2名の社員は、間違いなくたくさんの本を持ってきた。若かったよなぁ。

 老婆は夢中で彼等から本を借り読みに読んだ。以後、この年になっても本が好きだ。だから、数年前日系女性企業家の会で「ブッククラブ」ができた時は嬉しかった。隔月開かれ、他者が選択した本は、全く別世界なのだ。

 とにかく、想像もしなかった本が選ばれ、それを皆で読み話し合う。それが面白い。そして、今回また誰かが選んだのが、「星の王子様」だった。毎回、メンバーのために誰かが本を入手してくれる。(今回も先回の『たゆたえども沈まず』同様スカイランドトラベルの友子さんだ)こうして、皆の助け合いで、協力しあいで、ずっとこの会は続いている。

   たった今、「星の王子様」を読み終わった。本当に改めて深く感動した。そして、真夜中星が見たくて表へ飛び出した。昔、第二外国語でフランス語を選択し、それは苦労し単位を取った。追試を受けた記憶もある。できなかったんだよねぇ。考えてみると何をやっても…。この老婆「ダメ!」情けない。でも、そのフランス語でやっと読んだのが、この「星の王子様」だった。何が何だかわかっていなかった。でも今回、この年で、日本語に訳され、絵は色付き、この本を読んだのだ。翻訳も素晴らしい。今更と思わず、多分、それぞれ読む人の年齢やその経験で、それなりの解釈ができるから、「一度は読んでみて!」と皆に薦めたいなぁ。

 寒ーい、輝く星空の下、それも真夜中、暗ーい星空を眺めながらそう老婆は思った。読み終わった時の幸福感、これまた「いいですよぅ。」一度読んだら必ず宝物にしたくなる。刊行後60年以上たった今も世界中で皆の心をつかんで離さない。そんな本のようです。  

 ちょうど昨年の今頃だった。突然、一人住まいをしていた息子が、うつ病になって老婆の家にやってきた。それから、毎日、彼は薬漬けだからかわいそうに、寝てばかり、お腹がすくと台所で何か食べ、また寝る。延々と寝るだけの生活、そんな息子を見るのは辛く、情けなかった。一体なぜこんなことに?

 今「終活」を老婆は真剣に考え、きっと「天」は『これは、この世で最後の貴方の大仕事です。貴方は息子をベビーシッターに預けっぱなしで、仕事ばかりして、息子は淋しかったのです。今、貴方はあの世へ行く前に、思いっきり彼を大切にし、愛し、息子孝行をしなさい』とこの「試練」を授けたのだろうか?「よし、それならやるぞ!」と頑張ってみた。…がこの老婆、体の節々に支障が増え思うようでない。逆に息子にお願いして、特に難聴だから電話も難しい、医者に行くのも歩行難だから、彼に同行してもらう。息子孝行のはずが、何だか彼の世話になっている状態だ。不思議なものだ。あの薬漬けの息子がいつの間にか、薬の量が減り、なんやかんや老婆の手助けをするようになっている。最近は髭をそり、毎日入浴し、元気になっているのだ。歩行難の老婆の外出時には運転もしてくれる。特にIT関係の仕事はにくたらしいくらい、さっさとやってくれるではないか。  

 そんな息子に、この「星の王子様」読ませたいなぁ。読んだだけで生きている事自体がどんなにか幸せなのだと感じさせてくれるから。人生で「一番大切なことは目に見えない、生きていくために知っておかねばならない真実、それは実は単純だし、数も多くはない。そのすべてがきらめくような言葉で詰まっている、この小さな物語。お聖書のように難しくない。」なぁんて言ったら、いけないかしらぁ。

許 澄子

 

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