2016年11月24日 第48号

 昨日は77歳の誕生日だった。

 その数カ月前、いや、それよりずっと前からかもしれない。自分は今年77歳なのに誰からも誕生祝会の誘いがない、淋しくてたまらなかった。昨年までは毎年、マフィンに1本のローソクを立てただけの小さな集まりも含め、少なくとも4〜5回は誰かが誕生会をやってくれた。それなのに今年はどうしたことだろうか?「オー淋しい」。世の中で、世界中で、たった一人になったような「淋しさ」だ。私の友達桐島洋子さんが最近よくメールで「淋しい病になったのよ」というけれど、私も同じ「淋しい病」。サンフランシスコの長女、傍に仮住まいで一緒にいる次女、ダウンタウンに居る息子も「な〜んも」言ってこない。そして一生懸命、「11月◯◯日」「11月◯◯日」と唱えても、誰からの「うーん」も「すん」もない。

 老婆は考えた。ふっと心に芽生えた「ざわざわ騒ぎ、煩く動く足」。ちょっと立ち止り、過去を振り返った。そうかぁ、77歳。この年まで、どれだけ多くの人に自分はお世話になり、子どもたちにも助けられ、生きて来たことだろうかぁ、と考え始めた。すると「ありがたいこと」ばかり、「嬉しいこと」ばかり、どんどん思い出されてくる。人に騙されたことも、大病をしたことも。事業の失敗も、小さな成功もある、でもそれがあったから今がある。多くの人に励まされ、教えられ、助けられ、なんと学びの多い人生だったか! こうして書いているうちにうれし涙が出て、思い切り抱きしめたいような「幸せな私の77年!」なのだった。

 先ほどまでの『真暗な大宇宙のド真中、小さな星』にたった一人で置かれているような寂しさから、だんだんと解き放たれていった。そうだ! 今年は自分が友達にお礼をするいいチャンスだ! 昨年、雨の中を遠くから来て、私の誕生ランチご馳走して下さった、ホワイトロックの2人の友人、それに病気になるといつもすっとんできて下さる、40年近いつき合いの近所の林さんにも声をかけ、3人の参加でブランチは決まった。更に誕生日近くになるともう1人の参加者が現れ、自分も入れて合計5人のブランチ誕生会が決定。そこで老婆は、「たった3人のブランチ会」と思うか、「3人もいるブランチ会」と思うか考えてみた。これって全て自分次第。勝手ながら私は、「3人もいて、更に4人にもなったうれしいブランチ会」と思った途端、「その幸せ」気分は、言葉に現しようがない。ロケットに乗って宇宙をグーンと一回りして戻って来る漫画の主人公みたいな気分、「やったー!」。

 そして当日、それぞれがニコニコと会場に来て下さり、プレゼントまで。何だか申し訳ない気分。おいしいバースデーケーキも出てきた。誰かが注文しておいてくれたらしい。歌の上手な2人も含めて皆が美声で「ハッピーバースディ」を歌ってくれた。もう「物」は欲しくない、でも「心が欲しい」そんな年齢の「後期高齢者」、老婆だからなのだろうかねぇ。

 やがてブランチ誕生会から戻ると、次女から、「今夜はマイキーがここに来てママに料理作るから3人で食べようね」と連絡が入る。そして毎年、綺麗な花を送ってくれる長女から「病気で寝込み、お花が贈れずごめん!」と電話あり。落ち着いてデスクに座りPCのスイッチを入れる。わぁーぅ、どうしたの? このメール?コンピューターの故障! 凄い数のメールがダーッと受信されている。よく見ると、フェイスブックで世界中に散らばる友たちから「Happy Birthday!」。計算機もない時代からここまで生きてきた私はもう、星に取り残された、やっぱり宇宙人? 凄い時代なんだなぁ。

許 澄子

 

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