2016年6月9日 第24号

 どこで会っても、いつ会っても、その人は素晴らしい笑顔を誰にでも返している。そんな老夫婦がこのバンクーバーにいる。あの時、私はダウンタウンを一人で運転し、赤信号で停車した。すぐ横にOH! 彼らご夫婦が立っているではないか。奥さんはどうやら足を怪我しているようだ。車の窓開けて「◯◯さん、◯◯さん」と大声で呼びかけると、気がついた二人は手を振りながら「はーい」と答え、例の笑顔。私は彼らの名前を知っているが、彼らは私の名前は知らない。でも、手を振り大声で答えてくれた「ハーイ」の一言、二人の笑顔、それは素晴らしかった!

 ある時、マイケル・J・フォックス劇場でのコンサートに行った。VIP席端に、例のにこにこ御夫妻が座っていた。無論、彼らの笑顔が欲しくてご挨拶した。すると億万ドルの光り輝く笑顔が返ってきた。ふっと気付くとその席前を通る人通る人、皆笑顔でお二人に挨拶して行くではないか。それは和やかな雰囲気だ。コンサート前の心地よいひと時だった。

 初めてその人に出会ったのはある旅行社を訪ねた時だった。彼はそこを出て行く人、私は今入り口に入った人、単にすれ違っただけだ。けれど、そのすれ違いにその人がくれた優しい笑顔、サンタクロースそっくり紳士とはその後いたるところで出会うことになる。いつも誰にでも温かいにっこり笑顔で洗礼。そして、奥さんも。2人はどこでも皆を笑顔で祝福しているようだ。難聴人間の私でも笑顔くらいはできるのだよなぁ!

許 澄子

 

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