2018年10月18日 第42号

 10月も半ばを過ぎ、秋晴れの日が続いています。毎朝、黄色い落ち葉の絨毯が敷かれた森の小道を歩いて長男を学校に送っていきますが、これは中々気持ちの良いものです。その一方で、薬局ではインフルエンザの予防接種が始まり、また冬季の旅行に備えて旅行前の健康相談に訪れる人も増え、多忙を極めている今日この頃です。

 そんなある日、友人Wの奥さんが、処方せんをもって薬局へやってきました。話をきけば、友人Wは人生初の痛風発作に襲われ、足の親指の付け根に激しい痛みがあるのだとか。この症状を抑えるために、コルヒチン(英語ではコーチシンと発音、colchicin)という薬が処方されていたので、通り一遍の説明とともに薬を渡しました。

 後日、子供のサッカーの練習の日に、明らかにまだ足を引きずって歩くWを見つけたので、声をかけると、痛みは随分と良くなったとのこと。しかし、横にいた奥さんが、「せっかく薬を買って行ったのに、主人は下痢とかの副作用が嫌だからって、全然薬を飲まなかったんですよ!」と、薬の使用状況の報告をしてくれました。みなさんの中にも、副作用が怖いからといって、医師や薬剤師には内緒で薬を飲まなかったり、薬の量を自己調節している人はいませんか?

 「薬も過ぎれば毒となる」という諺は、薬の性質を端的に表しており、適量を摂取すれば期待通りの効果を発揮する薬も、飲み過ぎた場合には毒となり、健康に害を及ぼすという意味です。しかし、薬の飲み過ぎだけが原因で副作用が現れる訳ではありません。「体質」として、特定の薬に敏感で、皮膚症状や胃腸障害などが起こることもあります。ペニシリン系の抗菌剤により発疹が出る人がいるのは、その具体例です。また、薬が体内に吸収されてから排泄されるまでの過程で通過する各臓器の機能が、加齢や疾患などにより低下しているために、薬の効果そのものが出やすく、従って副作用が生じやすくなる場合もあります。その他にも、薬が作用を示す際に結合するタンパク質や、薬を代謝する酵素、併用薬、食べ物、嗜好品など、様々な要素が関与して副作用は現れます。

 副作用の頻度と見つけ方ですが、これは製薬会社が薬局や患者さん向けに提供する添付文書(product monograph)には、臨床試験(ヒトを対象として薬の有効性や安全性などを検討するために行われる試験)で報告された数々の副作用と頻度が記載されています。しかし、薬剤師はこれらの詳細にわたる副作用情報を、服薬指導時に全て網羅することはできませんから、よく起こる副作用、重症になりうる副作用といった重要事項を、厳選して患者さんに説明します。副作用は、説明されたからといって、必ず起こるものではないことを留意してください。

 副作用のない薬はこの世の中にはありませんから、覚えておきたいのは副作用が起きたときの対処方法です。薬を飲んで副作用が起こったのだから、その薬を飲むことを中止すれば良いという場合もあれば、そうでない場合もあります。アナフィラキシー反応という、急に発症して生命を脅かすほど重症化することがあるアレルギー反応が起きた場合、その薬は即座に中止します。これに対して、抗菌剤により、少しお腹がゆるくなったりした場合、これは想定範囲内の副作用ですから、薬の服用を続けるべきです。元々治療しようとしている疾患を治すことが重要ですから、大切なのは、薬の作用と副作用のバランスという訳です。

 薬の副作用が疑われた場合、相談相手として最適なのは薬局の薬剤師です。インターネットで副作用とその対処方法を調べるのは、わざわざ薬剤師に尋ねるよりも遥かに簡単なようにも思われますが、その情報を基にして、患者さんが自分で適切な判断できるかというと、これは非常に微妙なところです。チェーン展開している薬局は、ウォークイン・クリニックやファミリードクターに比べて営業時間が長く、電話で薬剤師と話せて、その場でアドバイスを得ることができます。この際、かかりつけの薬局ではなくても、遠慮せずに相談してください。気付かずに放置すると、健康に影響を及ぼすような副作用もあります。早い段階で、薬の副作用であることに気づき、対処することが大切です。

 冒頭の友人Wに処方されたコルヒチンという薬は、ほんの1回か2回服用するだけでも非常に効果がある薬ですから、多少の下痢が見られても、薬を飲んで症状を改善してもらいたかったなあというのが、友として、また薬剤師としての本音でした。バランス感覚は難しいものです。

 


佐藤厚

新潟県出身。薬剤師(日本・カナダ)。
2008年よりLondon Drugs (Gibsons)勤務。
2014年、旅行医学の国際認定(CTH)を取得し、現在薬局内でトラベルクリニックを担当。
2016年、認定糖尿病指導士(CDE)。

 

 

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