2016年11月17日 第47号

 ハロウィンも終わり、気がつけば2016年も年末に近づいてきました。カナダで子供が「Trick or treat!」とお菓子をもらって回る一方で、最近の日本では多くの若者が仮装をして東京渋谷の交差点に集まり、盛大なお祭りと化しているようです。私の職場でも、スタッフが様々な仮装をしますし、近所の住宅地では、小さな子供が来るのを楽しみにしているお年寄りも多くいますから、ハロウィンは老若男女が楽しめる行事のようです。

 ところで、老若男女を問わずに頻繁に購入される市販薬といえば、便秘の薬です。年を重ねるごとに一日の運動量や水分摂取量が減りますから、便秘になりやすくなります。若い年代では、妊娠した後、ホルモンの作用により便秘に悩まされる女性は沢山います。赤ちゃんや就学前の子供は、ウンチを出す力が弱いために便秘になり、時には大変な苦痛を伴うため、本人はもちろん、親も大変な苦労を抱えることも稀ではありません。

 カナダで販売されている便秘の薬は、いずれも処方せんを必要としないOTC(Over-the- Counter)薬として取り扱われています。いくつもの薬が薬局の棚に並んでいますが、これらは作用機序によっていくつかのグループに分けることができます。

1.便を柔らかくする薬
 腸管内に水分をとりこみ、腸のぜん動運動を促進するような薬です。鮮やかな青いボトルに入った液体のmagnesium hydroxide(商品名:Milk of Magnesia)、粉を水に溶かして服用するタイプのpolyethylene glycol 3350(PEG3350)(商品名:Lax-A-DayおよびRestoraLax)、甘い液体のLactulose(ジェネリック)、赤いカプセルのdocusate sodium(商品名Colace。小児用液剤もあり)がこれにあたります。これらの薬の効果を得るには、通常継続的な服用が必要です。

2.腸を刺激する薬
 腸管神経叢に直接作用して、ぜん動運動を亢進する薬です。日本でプルゼニドやアローゼン、ピンクの小粒コーラックを服用していて、カナダで同じような薬を探している人がいたら、ここで紹介する薬を試してください。
 植物由来のセンノシド(sennoside)を主成分とするSenokotという商品が非常に有名ですが、ジェネリック薬も販売されています。
 青と白の箱に入ったチョコレート味のチュアブル錠、Ex-Laxにもセンナが含まれています。ブランド品のSenokotに8.6㎎のsennosideが含まれるのに対し、ジェネリック薬には8.6㎎と12㎎の規格があり、またEx-Laxでは15㎎(Regular)と25㎎(Extra strength)と高用量となっていますから、ラベルに表記されている用量をよく確認してから服用するようにしてください。また、薬の効果は服用してから6〜12時間に現れます。就寝前に薬を飲むと、翌朝に効果を期待できます。

 Bisacodyl(商品名Dulcolax)もまた腸を刺激する薬です。錠剤と坐剤の2種類があり、錠剤は6〜12時間、坐剤は30分〜1時間以内に効果が見られます。  幼児から大人まで使える座薬であるGlycerin suppository(ジェネリック)は腸を刺激するとともに滑りをよくして排便を素早く促す作用があります。30分から1時間以内に効果が期待できる反面、使いすぎると便意を感じにくくなります。頻繁な使用は避けましょう。

3.食物繊維
 オレンジ色の容器に入った粉末状の薬であるpsyllium(商品名Metamucil等)とはオオバコのこと。古くから民間薬として利用されてきた植物です。不溶性食物繊維が便のカサを増し、大腸を刺激して、便意を促進します。

 では一体、どの便秘薬を選べば良いのでしょう?これは使用する人の年齢、好み、アレルギー歴、便秘の原因と種類、便秘歴、併用薬、併存疾患など、様々な要素によって決まりますから、一つの薬が全ての人にとっての最適な薬とは限りません。また継続的な使用が必要な薬と、継続的に使用すべきではない薬があります。耐性や副作用を防ぐためにも適切な使用方法を確認する必要があります。購入にあたっては、ぜひ薬剤師に一言ご相談ください。

 


佐藤厚

新潟県出身。薬剤師(日本・カナダ)。
2008年よりLondon Drugs (Gibsons)勤務。
2014年、旅行医学の国際認定(CTH)を取得し、現在薬局内でトラベルクリニックを担当。
2016年、認定糖尿病指導士(CDE)。

 

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