2019年3月28日 第13号

 一昔前まで、「成人病」と呼ばれていた「生活習慣病」。 厚生労働省の定義によると、「生活習慣病」は、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」とされています。「糖尿病」、「高血圧症」、「高脂血症」、「肥満症」、「脳卒中」、「歯周病」など、多くの種類がありますが、中でも、「糖尿病」は、「生活習慣病」と聞いて大半の人がまず思いつく病気ではないでしょうか。

 では、「糖尿病」と聞いて、どのような病気を連想しますか? 尿に糖が出る病気、太った人がなる病気…。よく耳にする病気ですが、正しく理解できていますか?

 仕事で頻繁に行く病院やクリニック。中でもよく行くのが、糖尿病クリニックです。待合室では、「病的肥満」レベルの人から、むしろ痩せ型と言える人まで、いろいろな人が待っています。ある時気がついたのは、見た目から判断して、明らかに太り気味の人には、白色人種と思われる人が多く、一見太っているようには見えない人には、アジア人種と思われる人が多いことです。

 実は、アジア人種、特に東アジア人種は、他の人種、特に白色人種に比べ、体質的に血糖上昇を抑えるホルモン「インスリン」の分泌力が低いと言われています。また、腸の周りに付着し、糖尿病発症リスクを高める「内臓脂肪」や、肝臓や筋肉中に溜まり、危険な脂肪とされている「異所性脂肪」が蓄積しやすい体質を持っています。つまり、一般的に日本人は、痩せているようでも、内臓脂肪蓄積型の「隠れ肥満」になりやすいことも、糖尿病を発症する比率が他の人種に比べて高い理由になります。

 「糖尿病」と言っても、糖が尿に漏れ出すのは、血糖値がおよそ9・4mmol/L(日本の測定方法で170mg/dL)を超えてから、食後でも、7・8mmol/L(同じく140mg/dL)を大きく上回ってからとされています。また、血糖値が高いことが、糖尿病に直結するわけではありません。肝硬変、肝炎、肝臓がん、脂肪肝などによる肝機能障害で、ブドウ糖がうまく取り込めない場合や、膵炎や膵臓がん、膵臓の石灰化などにより、インスリンの分泌量が減る場合も、高血糖になることがあります。

 「糖尿病」には多くの合併症があります。まとめて「しめじ」と呼ばれる三大合併症、「神経障害、網膜症、腎症」、命にかかわる合併症として、「えのき」と呼ばれる「壊疽、脳梗塞、狭心症・急性心筋梗塞」。「しめじ」でも「えのき」でもない合併症のひとつが、「認知症」です。

 認知症の中でも、「糖尿病」のある人は「アルツハイマー型認知症」になる確率が約1・5倍、「脳血管性認知症」は約2・5倍高いと報告されています。また、糖尿病治療薬の副作用で重度の低血糖症が起きると、「認知症」のリスクが高くなるとも言われています。

 「アルツハイマー型認知症」は、βアミロイドの蓄積が原因のひとつとされています。このβアミロイドを分解する酵素「ネプリライシン」は、インスリンを分解する主な酵素でもあります。高血糖、高インスリンの状態では、インスリン分解が優先され、βアミロイド分解が後回しになることにより、脳内に蓄積し、「アルツハイマー型認知症」に繋がります。そのため、「アルツハイマー型認知症」は、「第三の糖尿病」と呼ばれ始めています。

 「脳血管性認知症」は、脳血管障害が原因とされる認知症です。糖尿病により高血糖状態になると、糖化たんぱく質が増加します。これが血管障害や動脈硬化に繋がり、血流が滞って酸素や栄養が脳に回らなくなったり、高血圧や動脈硬化により、血管がもろくなることで、脳血管が破れたり詰まったりして、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などを引き起こします。これらの脳血管障害が、「脳血管性認知症」の原因となります。

 「万病のもと」と言われる糖尿病。多くの合併症を防ぐためにも、今一度、生活習慣を見直してみてください。

注)このコラムでの「糖尿病」は、「2型糖尿病」を指しています。

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

 

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