2019年1月1日 第1号
「高齢化」が進み、日本が「高齢化社会」になったのが1970年代。その後、さらに高齢化に拍車がかかり、「高齢社会」、そして、今では「超高齢社会」と呼ばれるようになりました 。
そもそも、「高齢化社会」と「高齢社会」の違いは、高齢化率(総人口に対する65歳以上の高齢者人口の割合)の数値によります。世界保健機構(WHO)や国連によると、社会の高齢化の定義は、3段階に分かれています。高齢化率が7%を超えた社会を「高齢化社会」、14%を超えた社会を「高齢社会」、21%を超えた社会を「超高齢社会」としています。日本の高齢化率が21%を超えたのが2007年。それ以来、日本は「超高齢社会」となりました。
日本の高齢化の背景には、医療技術の進歩などにより、寿命が延び、高齢者の数が増えたことだけでなく、少子化がもうひとつの大きな要因となっています。日本の人口は2010年をピークに減少の一途をたどり、厚生労働省の「平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)」によると、2017年の合計特殊出生率(ある期間(一年間)の出生状況に着目したもので、その年における各年齢(15〜49歳)の女性の出生率を合計したもの)は1・43%でした。ところが、65歳以上の高齢者人口は、総務省統計局の調査によると、2016年に総人口の約27・3%となり、過去最高を記録しています。この割合は、主要国で最高の数値で、今後もさらに増加の傾向にあります。このような状況の中で注目されるのが、「団塊の世代」の動向です。
第二次世界大戦直後、戦争から兵士が帰還したことや、人々が戦争の終結に安堵したことから、生まれた子供の数が増え、前後の世代に比べ、極端に人口比が高くなる現象が世界的に見られました。国や地域により、時期は前後するものの、概ね1946年から1952年の間に、北米、欧州、オセアニア、日本など、世界各国で同じ現象が起きました。日本では、1947年から1949年に生まれた世代にあたります。
この「団塊の世代」が、2015年には65歳以上になっており、2025年には75歳以上になります。現在の高齢者の定義は、65歳以上ですが、一世代前に比べ、定義上は高齢者とされる人でも、心身ともに健康で、社会活動も活発に行える人が多いと考えられます。現行の介護保険制度では、65歳になると、「第1号被保険者」として、要介護認定を受けることができます。しかし、実際には、65歳の時点で、重度の障がいや病気を抱えている人の比率は少ないと考えられます。内閣府の「平成30年版高齢者白書(全体版)」 で示される、厚生労働省の資料から算出された報告によると、「第1号被保険者」に対する要介護認定率は、 65歳から74歳で2・9%、75歳以上で23・5%となっています。
このように、75歳を超えると、要介護認定を受け、介護サービスを使い始める人が増え、入院や治療のための医療費も、年齢が上がるほど高くなります。つまり、要介護認定率が高くなる75歳以上の人口が増加すると、医療費や介護費をより多く使うようになり、年金も含む社会保障費が増加することになります。この現状が、「2025年問題」として提起され、2025年までに地域包括ケアのシステムを構築することが急がれています。
また、人口の高齢化に伴い、認知症の高齢者が増加します。2025年には、65歳以上の人の約20%、つまり、5人に1人が認知症と診断されると予測されています。認知症予備軍といわれる、MCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)の人を含めると、65歳以上の人の3人に1人が、認知症または認知症予備軍になると見込まれています。しかし、すべての認知症の人を、医療施設や介護施設でケアすることは不可能です。在宅介護でも、住み慣れた場所で孤立することなく生活できるよう、認知症の高齢者を地域で支援する体制が必要です。
日本だけでなく、先進諸国が抱える2025年問題。カナダでも状況は同じです。地域の社会的資源をいかに有効に活用するかが、先進諸国の共通の課題でしょう。
ガーリック康子 プロフィール
本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定