2016年10月27日 第44号

泉康雄

 今年の冬は例年より早くやってきた。9月中旬に霜が降って、数日前、10月半ばにもならないのに、粉雪が1時間ほどの間チラホラ降った。そして今朝の雪である。6月末、裏庭の片隅に種をまいたヒマワリの一種、俗名マンモス・ロシアンの茎が1メートル半ほどになった後、遅々として伸びなかったが、この雪で絶望的となった。せっかく黄色い大輪を期待していたのだが…。なにしろ、朝起きるとすでに2センチほどの降雪で、そこらじゅうを白い絨毯で覆っていた。明け方から降り始めたのだろう、木々の枝はすでに雪の重さで先の方がしなっている。塀の上にも、こんもりと雪が並んで積もっている。雪は、雨と違って音もなく、気づかないうちに訪れる。そして音もなく降り続け、気づかないうちに積もっている。

 少し早いかなと思ったが、スノータイヤに変えておいてよかった。アルバータの冬は、オールシーズンのタイヤでは間に合わない時がある。今朝の雪は水気を含んでいるから溶けるのが早いだろうと思いながら、いつものように仕事に出かける。焦らずゆっくり走る。他の車も早い冬に驚いてか安全運転である。午後になると温度が2度ほどになって雪は少しずつ溶け始め、地面が所々に見えてきた。それでも、雪は飽くことなく静かに降り続けている。

 僕の仕事場の入り口の屋根は傾斜になっている。入口の真上には、雪が解け始めても、雪の塊がドサリと頭の上に落ちないように、屋根のところに丁度、楔をひっくり返したようなものが十数本縦横に並んで出ている。それは、プラスチックでできているようで、普段はさほど目につかない装置である。だから出入りする時その下を歩いても安心である、と思っていた。しかし実際には雪が溶けだすとドサリ、ドサリと落ちてくる。気のきいた装置のようであるがアルバータでは頼りにはならない。ただの飾りである。頼りにならないものを頼りにして、上を注意しないで出入りすると、首の骨を折るほどの大怪我をすることになる。だからといって屋根をフラットに改造しても、これまた雪国では危険である。決して安全ではない。

 以前に僕の住むコールデールの町にある唯一のスーパーマーケットが潰されたことがあった。スーパーマーケットの屋根はフラットに造られていた。大雪が降って、そのすぐ後に、しとしと雨が降ったのだ。大体が古い建物ではあったが、その雪の重さに耐えられず、潰されてしまった。その時は見るも無残な、哀れな姿であった。すぐに傾斜のある屋根になって新しく立て直され、以前より大きくなり、買い物客の出入りも頻繁になった。災い転じて福となったわけだ。

 雪国では、なるべく傾斜のある屋根が向いている。長い経験から生まれた知恵である。そういえば僕の家も、周りの家もみな傾斜のある屋根で、フラットの屋根の家は見かけない。

 

 

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