2017年8月3日 第31号

 この頃中年太りかしら!?何だかオナカが出てきたみたい!!ダイエットが必要かしら、それとも運動療法、食事療法…でもチョッと運動は苦手だし、すぐ息が切れるし、疲れるし…確かに、思い当たる事も多いかもしれませんし、全くその通りなのかもしれませんが、その前にチョッとだけ貴女のおなかを触ってみて下さい。

 眠る前に床についたら上を向いた状態で力を抜いて、ユッタリとした気持ちでリラックスして、下腹部を軽く押すようにして触れてみてください。大きな筋腫であればチョッとその気になって触れるだけでも判ると思います。(小さな筋腫であれば慣れていないと分かりにくいものですが。)普通は、おなかの上からは子宮は触れませんが、もしも、おなかの上から硬いものが触れると子宮筋腫の可能性もでてきます。勿論、他の疾患の場合もありますし、実際には何もないのに気のせいで変なふうに感じることも多く見られます。

 しかし、発見できれば直ちに医療機関を受診することが必要ですが、発見できなくても御自分で気になるようであれば子宮癌の検診を兼ねて受診することも一つの方法かもしれません。子宮筋腫は婦人科良性腫瘍の中で最も頻度が高く、成熟期婦人の15〜20%に見られるとされています。さらに、貧血症や生理痛を伴うことも多く、その上、40歳代後半に多く、更年期、体重増加とほぼ同じ時期に重なってきます。

 ですので、オナカが出てきた時は肥満ばかりでなく、子宮筋腫も疑ってみる必要があります。子宮筋腫があると、月経時の血液量が多い方も居られますが、必ずしもそうではなく、筋腫が大きくてもできる場所によっては全く月経血量に変化を来たすことはありませんし、反対にいくら小さくても筋腫のできた場所によっては過多月経を呈してきます。おまけに、月経痛を伴うことも多いので痛みだけに気をとられて、筋腫のことを見逃してしまう方も見受けられます。

 子宮筋腫の原因ははっきり分かっていませんが、女性ホルモンとの関連は強く、性成熟期に多く発見され、閉経を迎えると縮小傾向を辿ります。子供さんを出産なさった方は、子宮や卵巣について主治医からいろいろな情報を受けておられると思いますが、もしも筋腫を指摘されたことがあれば筋腫は通常は閉経までは大きくなる傾向がありますので、更に注意が必要になってきます。子宮筋腫を有する方に見られる症状のうち下腹部の腫瘤以外でも、比較的よく見られる随伴症状に貧血があります。過多月経があれば推測できるかもしれませんが、毎月のことなので多いとか少ないという感覚が鈍ってしまい多いとは感じなくなってしまう方も見受けられますので、顔色がすぐれない、疲れやすい、少しの運動でも息が速くなって動悸が激しく苦しくなる、身体が冷える、など貧血症によく見られる症状がある方も、その原因が子宮筋腫である可能性は否定できません。過多月経による貧血症は毎月の月経血量が翌月までに造られる血液量よりも多い為、徐々に徐々に貧血が進むので身体の方が貧血の状態に適応してしまって自覚症状に乏しく、何かの機会に血液の検査をした時に初めてとんでもない貧血の数値が発見され診断が付くこともあります。

 女性は貧血に強いと言われますが、血液は全身を巡り栄養や酸素、老廃物を運搬する大切な役割をしていますので、慢性的な貧血症が及ぼす悪影響は計り知れません。貧血症の診断や治療の重要性は申すまでもありません。子宮筋腫は突発的に発生する疾患ではありませんが、定期的な婦人科的な癌検診に加え健康維持・増進の目的として医療機関での御相談をお勧めいたします。

 


杉原 義信(すぎはら よしのぶ)

1948年横浜市生まれ。名古屋市立大学卒業後慶応大学病院、東海大学病院、東海大学大磯病院を経て、杉原産婦人科医院を開設。 妊娠・出産や婦人科疾患を主体に地域医療に従事。2009年1月、大自然に抱かれたカナダ・バンクーバーに遊学。

 

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