2019年7月11日 第28号
ケベック州政府は9日、ケベックシティにある州議会の議長席上に掛けられていた十字架像を撤去した。
ケベック州CAQ政権は先月16日に世俗主義法を可決し、教師や裁判官、警察官などを含む州の公務員に対して宗教的シンボルを着用することを禁止した。宗教的シンボルには、イスラム教徒のヒジャブやユダヤ教のキッパに加えて、キリスト教の十字架も対象となる。そのため、法案を可決したにもかかわらず十字架像を議会に掲げているのはおかしいとの批判が起き、この日の十字架像撤去となった。
しかし問題はこれで解決したわけではない。現在、この法律を巡ってはイスラム教団体や人権擁護団体が訴えを起こしている。この法律はあらかじめ「カナダの権利と自由の憲章」に対して適用除外条項を発動しているためカナダ憲章違反として争えないことから、職業選択の自由などを奪うという観点で訴えている。
連邦自由党ジャスティン・トルドー首相などは州政府が州民に何を着用するかしないかを押し付けることはできないと反対の立場を表明しているが、表立っての批判は控えている。今秋には連邦総選挙が実施される。
この裁判の最中、ケベック州政府ジャン-フランソワ・ロバージュ教育大臣が人権活動家でノーベル平和賞受賞者として知られるマララ・ユスフザイさんと一緒に写っている写真をツイッターに投稿し批判が起きた。ユスフザイさんはイスラム教徒女性が着用するヒジャブを着用していた。ケベック州の法律は、イスラム教徒を標的にしているとの見方が強い、特にニカブやヒジャブを着用する女性の締め付けを狙いとしているとみられている。
裁判所は今回の訴えに対し、今月19日に何らかの判断を下すとしている。