2018年2月8日 第6号
オンタリオ州トロントで昨年12月15日、自宅内のプール脇で死んでいるところが発見されたカナダ屈指の富豪シャーマン夫妻。
当初は夫のバリーさんが妻のハニーさんを殺したあと、自殺したのではないかと言われていたが、警察は6週間に及ぶ捜査の結果、二人とも他殺だったと結論付けた。犯人はまだ逮捕されていないが、メディアは親戚との金銭的なトラブルが原因である可能性を示唆している。
シャーマンさんはジェネリック薬品メーカー、アポテックスの創業者だが、長年にわたり、従兄弟とこの会社の所有権について法廷で争っていた。そしてオンタリオ州最高裁は昨年9月、従兄弟らの訴えを退ける判決を出し、さらにシャーマンさんの死体が見つかる1週間前には、30万ドルの法定費用をシャーマンさんに対し支払うよう命じていた。
この争いのもとは、1960年代まで遡る。シャーマンさんは当時、叔父のルイス・ウィンターさんが経営する製薬会社エンパイア・ラボラトリーズで働いていたが、父親の死後ウィンターさんと近しい関係になった。ウィンターさんの死後、エンパイア社を友人と買い取ったシャーマンさんは、その後(1970年代初頭)同社を売却、新しくアポテックスを創立した。この会社は急成長し、シャーマンさんは推定47億ドルという巨額の富を築くことになった。これに対しウィンターさんの実の子供4人は、シャーマンさんはウィンターさんの財産を管理する受託者(fiduciary)としての義務を子供たちに果たす責任があるとして、アポテックス社の所有権20パーセントを譲渡するよう裁判を起こしていた。
裁判に勝てば、おそらく10億ドルの資産が転がり込むはずだったが、逆に30万ドルの支払いを命じられたウィンターさんの子供たちは判決を不服として控訴しているが、このことがメディアに取り上げられ、疑いの目が向けられた。ついに、その代表を努めるケリー・ウィンターさんがメディアの取材に応じ、身の潔白を主張したほか、90年代にはシャーマンさんからアポテックス社のオフィスで、妻のハニーさんを殺してくれと頼まれたことすらあったと語っている。この頃ウィンターさんは薬物に手を染め、違法組織とのつながりもあったという。しかし6年前に薬物を絶ち、以来そうした付き合いもなくなっていると付け加えていた。その上で、警察が当初の見解から一転、他殺事件としたのは、シャーマン家の顧問弁護士ブライアン・グリーンスパンさんと、彼の私設捜査チームによる圧力だと指摘している。
一方マスコミは、事件が起こる直前のウィンターさんの足取りを綿密に調査している。