2018年1月18日 第3号

 オンタリオ州トロント東部のスカボロー地区で12日、児童が通学途中に、頭に巻いていたイスラム教のスカーフ(ヒジャブ)を不審者に切り裂かれたと訴え大騒ぎとなったが、実は作り話だったことが15日、わかった。

 ことの発端は、ポウリン・ジョンソン公立学校の6年生児童が、登校中にサングラスをかけた男が背後から近づき、ハサミで彼女のヒジャブを切り裂いたと学校で発言したことだった。彼女は、不審者が2度も彼女を襲おうとしたとも話していた。

 警察はヘイトクライムの線で捜査を開始、知らせを受けた児童の母親は、涙を浮かべながらも「それでもカナダが平和なところであると信じているし、自分がカナダ人であることを誇りに思っている」と取材に答えるなど、事態は全国ニュースのレベルになっていった。

 さらにトルドー首相も、こうした事件を激しく非難するコメントをツイート、さらにキャサリン・ウィンオンタリオ州首相とジョン・トーリートロント市市長も、信ずるものや身につけているもので危険にさらされるようなことは断じて許されないと、強い口調で非難。

 ところが15日になりトロント市警察は、そもそも児童が襲われた事実はなかったとする捜査結果を発表した。

 同市警察では、こうした作り話から大騒動になることは極めてまれであり、逆にこうしたことで今後、実際に起こった事件の被害者が名乗り出ることをためらうことがないよう、求めていた。また同地域の教育委員会は、少女の襲撃は実際には起こっていなかったことに安堵しているとの短いコメントを発表している。なお、騒ぎの元となった少女に法的処分が下されることはないという。

 一方、同州オタワ市の人権活動家アミラ・エルガワビーさんは、この少女はどれほど大きな社会的インパクトが起こるか、多分わかっていなかったのだろうと取材に答えている。しかしこれが作り話だったことを残念に思うとともに、こうしたことはイスラム教を敵視する人々を勢いづけるだけだとコメントしている。

 

 

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