2018年1月1日 第1号

 カナダ統計局は国内での海外在住者による住宅購入の実態についての調査結果を12月19日発表した。注目されたのはブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーとオンタリオ州トロントの結果。高騰し続ける両市場の原因究明と解決の糸口になるのではと期待された。

 カナダ・モーゲージ&ハウジング・コーポレーション(CMHC)の協力による今回の調査で明らかになったのは、海外在住者による住宅所有率がバンクーバーエリアでは4・8パーセント、トロントエリアでは3・4パーセントと低かったものの、新しく、価格が高く、中心都市に近い物件ほど海外在住者による住宅所有率が高いことだった。さらに最近の傾向として、一軒家よりもコンドミニアムの所有率が高く、海外投資家向けコンドミニアムの建設ラッシュを裏付ける結果となった。

 今回の調査での海外在住者の定義は、国外に在住しながらカナダに住宅を所有するカナダ国民と、主要居住国がカナダ以外の外国籍の人となっている。

 報告書によると、全住宅に占める海外在住者所有の割合は、バンクーバー広域圏では4・8パーセント、バンクーバー市では7・6パーセント、トロント広域圏では3・4パーセント、トロント市では4・9パーセントだった。

 海外在住者に人気の高いコンドミニアムでは、バンクーバー広域圏で7・9パーセント、バンクーバー市では19・1パーセント、トロント広域圏では7・2パーセント、トロント市では11・6パーセントと都市部で高い数字になっている。

 住宅価格では、バンクーバー広域圏での海外在住者が所有する一軒家の平均住宅価格は230万ドル、カナダ国内在住者では160万ドル、コンドミニアムでは海外在住者が69万2千ドル、国内在住者では53万1千ドルと30パーセントも高い。トロント広域圏でも海外在住者が所有する一軒家の平均価格は94万6百ドル、コンドミニアムでは43万9千ドル。バンクーバーよりも低いが、どちらも国内在住者が所有する住宅よりも高くなっている。

 国内で住宅価格が最も高いバンクーバーを、都市ごとに分析すると、より新しく、より高級で、より都市圏に近いという傾向が顕著に表れている。

 住宅市場全体での海外在住者の割合は、バンクーバー市で7・6パーセント、リッチモンド市で7・5パーセント、ウエスト・バンクーバー市6・2パーセント、一方でバンクーバー中心地から遠い都市では割合が低く、ピットメドウ市で1・9パーセント、デルタ市で2・0パーセント、メープルリッジで2・1パーセントとなっている。

 コンドミニアムでは、2016年から2017年にかけてバンクーバー広域圏で建設された物件のうち、海外在住者所有は15・5パーセント、最も割合が高かったのはリッチモンド市で23・69パーセント、次いでコキットラム市で22・69パーセント、バンクーバー市で19・14パーセントと続いている。最も低かったのはノース・バンクーバー・ディストリクトで1・33パーセントだった。

 今回の調査結果について専門家は、バンクーバーとトロントで、住民が感じている最近のコンドミニアム市場での海外在住者の影響が明らかになったと調査結果に一定の評価を示したが、一方で本当に住民が知りたいと思っていることが明らかになっていないとも指摘している。

 今回の調査では、住宅の所有者に焦点を絞って調査しているため、お金の流れが明らかにされず、海外資本がどれほど住宅価格に反映されているのか、所有者はカナダ在住者でも資金は海外からという投資の可能性などを網羅しきれていないと指摘している。

 連邦政府は今年、カナダ統計局の住宅事情調査に5年で3990万ドルの予算を付けている。中間所得層を支援することを政策の重要課題としている自由党政権にとって、平均所得の上昇率を大きく上回る住宅価格の高騰化に歯止めを掛ける対策のためのデータ収集を約束している。

 州政府の政策としては、ブリティッシュ・コロンビア州前自由党政権が州民からの批判を受け、2016年8月に海外在住者が住宅を購入する時に15パーセント課税する海外購入者税を導入、オンタリオ州でも今年4月に同様の課税が実施された。

 しかし導入直後は落ち着いた住宅価格も、バンクーバーではすでに上昇傾向になっている。バンクーバーとトロントでは住宅バブルが起こっているという見方もあり、カナダ銀行も好調なカナダ経済への危険因子として住宅価格の高騰と高い負債率をあげている。負債率が高い要因の一つが住宅ローンで、住宅価格の高騰はカナダ経済に影響するとしてカナダ政府の対策を促している。

 

 

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