2017年9月14日 第37号
1950年代にカナダで開発されていたジェット戦闘機、アブロ・アロー。その開発・実験のために製作された3メートルほどの模型が、オンタリオ州のオンタリオ湖の湖底で発見された。
この調査を行っていたグループ(Raise the Arrow)が8日、その姿をとらえたソナー映像や動画を一般公開した。そこにはアブロ・アローの特徴的な三角形の主翼や、折れ曲がった機首などが写っていた。
無人探査機を用いて行われたこの調査は、7月に開始された。1日8時間の探査を繰り返し、湖岸近くの水深5メートルから、沖合いの水深100メートルまでの湖底を約64平方キロメートル(バンクーバー市の広さの約半分の面積)をカバーする計画だった。
しかし悪天候のため調査ができたのは実質2週間だったと、調査グループでは説明している。しかし湖底に沈んだのが約60年前にもかかわらず、オンタリオ湖の湖底の大部分が固い岩盤であったことから、実験機が泥などに埋もれておらず今回の発見につながった。
また今回新たに分かったのは、複数の試験機が湖底に沈んでいたということ。開発当時は極秘プロジェクトだったため詳細はよく分かっていないが、実機の8分の1の大きさの全長約3メートルの実験機は9機製造されたとみられている。各種センサーなどを取り付けた実験機は小型ロケットに固定され、オンタリオ湖東部にある岬ポイント・ピーターから湖に向かって発射された。
東西冷戦当時、ソビエト連邦からの爆撃機を迎撃する目的で進められていたアブロ・アローの開発は、当時のジョン・ディーフェンベーカー首相の一声で突然中止になった。さらに製造中だった機体も全て解体、鉄くずとして二束三文で売却された。これによりプロジェクトに携わっていた約3万人が職を追われ、カナダの軍事航空産業の発展にも大きな痛手となった。
調査チームは今シーズン中に潜水士による調査も計画している。機体を覆いつくしているゼブラ貝の一部を除去する許可も得ており、今回発見された機体を特定する情報を得られる可能性がある。機体は水深30〜60メートルの湖底にあるとみられており、最終的には引き揚げ作業まで行う予定だ。