2016年9月1日 第36号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーのアパートで8月25日夜、就寝中の女性がサソリに刺された。

 同市中心部の、海岸沿いのコール・ハーバー地区にあるアパートの一室で寝ていたレイチェル・フォックスさんは、左手と右腕に突然激しい痛みを感じて飛び起きた。最初はガラスの破片か何かに乗っかったのではないかと思ったが、特に出血している様子はなかった。ただ赤くはれ上がっているだけだったが、それまでに感じたことのないような激しい痛みが彼女を襲った。

 一体何が原因だったのかと、ベッドの上をあらためてチェックしたところ、全長5センチほどのサソリが枕の上を這っているのを見つけ、思わず後ずさりした。

 市内の劇場リオ・シアターのプログラム・マネジャーを勤めるフォックスさん、花柄のシーツと、おどろおどろしいサソリの対比がなんとも映画的だったと、取材に語っている。また頭の半分は恐怖感で満たされながらも、あと半分ではこの絶対にありえないような情況に浮かれているようだったと、当時の感情を表現している。

 ルームメイトがすぐさま救急車を呼び、病院で治療を済ませたフォックスさんらは、それからサソリ退治を行った。

 サソリは間もなく、フォックスさんのベッド横にいるところ発見された。最初は殺虫剤を、サソリの動きを先読みしてスプレーしてみたが、結果的にサソリを自分たちに向かわせることになってしまった。それも尻尾を立てた攻撃態勢で。

 これに対しルームメイトはフライパンで応戦、見事サソリを打ちのめした。

 動物病院の専門家によると、野生のサソリがBC州内で生息しているのは、内陸部のオカナガンの特定の地域に限られている。今回フォックスさんを刺したサソリは、おそらく熱帯地方から輸入されたフルーツか野菜に紛れ込んできたのだろうと、専門家は推測している。

 フォックスさんがこの話を友人にしても、なかなか信じてもらえなかったという。それどころか治療に当たった病院のスタッフすら、彼女の話に半信半疑だった。

 しかし彼女が見たのは、紛れもないサソリだった。メトロバンクーバーでサソリに刺される可能性は限りなくゼロに近いと専門家は指摘するが、それでも体長5センチのサソリが部屋の中にいるところを想像するのは心地よいものではない。さらに今回のサソリは成虫ではなかったので、もっと大きなものに遭遇する可能性すらあった。

 

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