アルバータ州の高速道路沿いを、フェースペイントをほどこした男が拳銃を振りかざして走っているとの通報を受けた警察官が現場に急行したところ、それが実はキャンペーンのためにマラソンでカナダを横断中の先住民の男性だったことがわかった。

 この男性は、通称「カリブー・レグ」と呼ばれているブラッド・ファースさん。5月にバンクーバーを出発し、先住民女性が殺されたり行方不明になったりしていることへの関心を高めてもらうために、東海岸のセント・ジョンズまでをマラソンで走っている最中だった。実は彼自身、妹を昨年夏に亡くしている。

 現場にはパトカー3台が駆けつけるものものしさだったが、ファースさんが先住民の正装を身につけ、手にはハンド・ドラムを所持しているだけだったことを確認すると、このような通報があって駆けつけたと理由を彼に説明、とくに何の罰金も科さずに立ち去った。

 今回で5回目となる彼の長距離マラソン。昨年はバンクーバーからオタワまでを走破し、ユーコン準州のピール川流域保全のための基金集めと政治家への陳情を行った。この時もオンタリオ州内の高速道路沿いをマラソン中に、何回か地元警察に職務質問されている。

 そもそも、ファースさんがマラソンに目覚めたのは、あるバンクーバー市警察の警察官の一言がきっかけだった。当時ホームレスで麻薬中毒だったファースさんは、よく警察官の追跡を振り切っていたが、そんな彼に1人の警察官がかけた言葉が、「これはお前の才能だな」だった。

 それからファースさんはバンクーバー・ファルコン・アスレチック・クラブに加入、ほどなくしてバンクーバー市のトップマラソン・ランナーになった。彼はマラソンで自己を立ち直らせた。彼の当面の目標は、ジャスティン・トルドー首相と並んで走り、殺されたり行方不明になったりしている先住民女性の調査について語ることだという。

 

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