8万5千人近い死者を出した、2008年の中国・四川大地震。この時小学校で授業を受けていたメイホア・ファンさんは、崩れてきたがれきに足を挟まれた。神経もやられたせいか、痛みは感じなかったと、当時を語るファンさん。しかし救助は遅れ、軍のヘリコプターが山間の彼女の村に到着したのは、地震発生から1週間後のことだった。

 結局両足ともひざ上切断となったファンさん。しかし、この時にヘリコプターで救助されたことが、彼女の心に強く残った。

 パイロットなら人命救助ができる、パイロットとしての経験を積みたいと願うようになったファンさんは、ブリティッシュ・コロンビア州ピット・メドウズ空港にあるインペリアル・カナディアン・フライング・スクールのスポンサーを受け、バンクーバーでフライト・トレーニングの体験コースを受講している。飛行訓練に必要な授業を終了し、シミュレーター訓練も経験したファンさんは、さらに教官同乗で実際の飛行訓練も数回行っている。

 少数民族の小作農の家に生まれ、主に2人の祖母に育てられたファンさん。しかし慈善団体の支援によりインターナショナル・スクールに進学、優秀な成績を収めた。やがてそのような前向きな彼女の姿勢から、同じような境遇の子供たちに話をしてほしいという依頼がくるようになった。

 自分は何かを語るよりも、まず実行するタイプと言うファンさん。彼女は奨学金が下りればブリティッシュ・コロンビア大学で薬学を学ぶことになっている。この世に生を受けた以上、学び続け、自分を磨き続けて人生を楽しまなければならない、そのためには決して夢をあきらめないこと。将来何が起こるかは、誰にも予見できないのだから…と、ファンさんは取材に語っていた。

 なお四肢に障害がありながら飛行機操縦に挑戦した例としては、先天性異常ため生まれながらに両腕がなかったアメリカのジェシカ・コックスさんが、3年間にわたる訓練の末、2008年に軽飛行機免許を取得している。また彼女はギネス世界記録にも、世界初の両腕のないパイロットとして認定されている。

 

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