ジャスティン・トルドー首相は8日、イラクとシリアでの空爆参加からカナダ軍が撤退することを表明した。今後はイラクでの兵士訓練などで貢献する。

 記者会見で「全てをこなすことはできない。その地域を手助けする最良かつ正しい方法で貢献したいと思っている」と説明した。

 カナダはアメリカ主導で実施されているイラクとシリアでのイスラム国への空爆に、2014年秋、前保守党政権時代に参加を国会で決定し、同年11月から参加。現在参加している国々の中では最も早くからアメリカに協力している。当時は、国内で起こった過激派に触発された男による国会襲撃事件などもあり、イスラム国撲滅を目的とした空爆参加は国民の一定の理解を得ていた。

 しかし、昨年10月の総選挙で、空爆から撤退を公約した自由党が勝利。アメリカをはじめとするイスラム国撲滅を目指す国々からは撤退を懸念する声も上がっていたが、今回、公約通り空爆撤退を表明した。今後、国会で審議、決定される。 これに対し、アメリカのホワイトハウス報道官は、「今後もイスラム国撲滅という我々の目的を達成するためにカナダが違う形で貢献できることもあると確信している、そのための話し合いも続けていく」と記者会見で語った。

 トルドー首相はこの日アメリカのオバマ大統領とも電話会談し、理解を得たという。来月にはワシントンで会談が予定されている。

 野党保守党ローナ・アンブローズ暫定党首は「首相の決定は、世界のテロの恐怖との戦いに対し、立ち向かうという役割から逃げるというカナダとして恥ずべき行為」と批判。新民主党(NDP)は、地上での訓練任務にこれまでより3倍の兵士が派遣されることに対し危惧を感じると派兵増員に懸念を示した。昨年イラクでの訓練に当たっていたカナダ兵がイラク兵の誤射で1人死亡、4人が負傷している。

 空爆に参加している6機は今月22日までに撤退し、燃料補給機1機と偵察機2機は引き続き任務を遂行する。さらに、イラク兵訓練のために現在イラク北部でカナダ軍兵士69人が任務にあたっているが、これを200人に増加する。派兵期間は2年間。それまでにその後の対応を検討する。その他にも、周辺諸国への援助も含め、3年間で約16億ドルを支援する。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。