Ⅲ Dr. Stevensonの研究
−前世を記憶する子どもたち−

Dr. Stevenson は、カナダ人の精神科医で、既に1960年代に「前世の生まれ変り」について「学問的」なリサーチを始め、その研究を40年に亘って続けた研究者です。Dr. Weissも大きな影響を受けた研究者の一人にその名を上げていて、前世研究の先駆けをなした人ですが、残念ながら一般にはあまり知られていません。Dr. Stevenson は、インド、セイロン、ブラジル、アラスカ、レバノンなどの国々を訪れ、前世を記憶する子どもたち3000人にインタビューした結果を精密に検討し、述べられた内容が事実として証明された20例について、 “Twenty Cases Suggestive of Reincarnation”1)として報告しました。それらの一部の例について簡単に紹介をしたいと思います。

少年プラカシ 1)
1951年、インドのチャッタという町に生まれたプラカシは、幼児の頃、深夜突然目を覚まし、家を飛び出して、「僕の名はニルマルだ、ずっと住んでいた町コシカランに帰る!」と叫び出し、それを頻繁に繰り返していました。そして5歳になる頃には、彼の前世ニルマルの生活の記憶がさらに鮮明になり、たえず、「コシカランに帰る」と言い出したため、家族の憂慮は深くなっていきます。父親は、彼がそのことを言い出すたびに、殴りつけてはそれを忘れさせようとしていました。1961年、Dr. Stevensonの調査をきっかけに、彼は自分の前世の家族と改めて再会(!)することになり、彼はその際、父親、母親、姉、弟、おば、近所の人々をすぐに認識し、ニルマルの前世で大好きだった姉のタラを見たときには、喜びのあまり泣き出してしまった程でした。そして、かつて住んでいたニルマルの家の内部をよくわかっており、ニルマルの家族は、自分たちの家族の様々なプライベートな情報を知っているプラカシを自分たちの息子ニルマルの生まれ変りと認めるようになります。
1971年、Dr. Stevensonが再調査のため、20歳になっていた彼を訪ねますが、彼は少年の当時頭のよい子であったにもかかわらず、Grade 10を2回も落ちて、最終的には学校を退学していました。そして、彼の前世のニルマルであった頃の記憶は消えることはなく絶えず想いだしているようで、そして今でも前世の家族の方に極めて強い愛着を感じているようだったと報告しています。

少年ビシェン 2)3)
ビシェンはインドのバイレーという町の貧しいグラム家に生まれました2)。彼は1歳半の頃から、ピーリービートという町にしきりに行きたがっていて、5歳半になった頃、自分はその町の、裕福な地主の息子のラクシュミ・ナラインだったと主張し始め、グラム家の質素な生活に不満を募らせるようになりました。食事についても、こんなものは召使でも食べないと拒否し、木綿の服を投げ出し絹の服を要求したりし始めました。さらに子どもでありながら、ブランデーを飲み始め、前世では酒豪だったと豪語、パドマという名の娼婦の愛人がいて、その恋敵をピストルで撃ち殺したなどと自慢。そこで家族はその事実を確かめるため、弁護士の仲介を得て、一家でピーリービートのナライン一家を尋ねることになりました。ラクシュミは既に8年前に亡くなっていましたが、この町の住人のほとんどは、裕福なナライン家の道楽息子ラクシュミを憶えており、さらに恋敵を撃ち殺した顛末は大きな事件だったので、ナライン家の前は既に黒山の人だかり。家の前に来たビシェンは家の構造もすっかりよくわかっているようで、ラクシュミ・ナラインの父親が亡くなる前に、財産を家の内部のどこかに隠したらしいのですが、長く家族の誰もその在りかがわからなかったところ、ビシェンはその隠し場所を示唆。また、ラクシュミ・ナラインは楽器のタブラの名手だったそうで、ラクシュミの父親がそれを見せると、それまでビシェンはタブラなど演奏したこともないどころか、見たこともなかったのに、皆の前でみごとに演奏して見せ、ビシェンの家族を驚かせたのです(註1)。
註1 このような、前世の記憶を持っている人が、それまで全く習得したことがないはずの外国語を突然流暢に話し出したり、また、弾いたこともない楽器を演奏するなど、現世で身につけたことのない技能を示す“Xenoglossy”は生まれ変りに現れる重要な要素とされている。

最終的に、これらの例は、その前世の家族、親類、知人、あるいは新聞など入手可能な情報から得られた事実と、本人の詳細な面接内容が詳細に照合された結果、生まれ変りは事実であろうと(それでも、非常に慎重な研究者であるDr. StevensonはSuggestive of Reincarnation〔生まれ変りを示唆する〕と表現し)、報告がなされたのでした。

引用文献

1)Ian Stevenson, M.D., “Twenty Cases Suggestive of Reincarnation”, Charlottesville: University of  Virginia Press, (Second edition)1974
2)Ian Stevenson, M.D., “Cases of the Reincarnation Type”, Vol.1: “The Case of Bishen Chand Kapoor” (Charlottesville: University of  Virginia Press) 1976
3)Ian Stevenson, M.D., “Xenoglossy”(Charlottesville: University of  Virginia Press) 1976

 

2011年11月17日号(#47)にて掲載

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