日本語学習に奮闘しているお子さん&ご両親へ

バンクーバーには国際結婚カップルがなんと多いことでしょう。両親のどちらかが日本人という子どもも珍しくありません。英語も大切だけど、日本語も 覚えてほしい。日本文化も知ってもらいたい。2つの言語、文化を背景に持つ子どもたちの育児や教育、みなさんはどうしていますか? 自分も含め、子育て 真っ最中のママとパパ、日本語学習に奮闘しているお子さん&ご両親への参考になればと、日本語学校の先生にお話を聞くことにしました。
第1回目の訪問先はバンクーバー日本語学校並びに日系人会館『こどもの国』。幼児教育について尋ねました。

大切な幼児教育を日本語で
もともとは日本語学校の付属幼稚園として日本語を教えるための幼稚園があったそうですが、日本語教育よりも幼児教育を日本語でしようと始まったのが『こど もの国』です。園長の本間真理先生は、幼児教育のときにどうしてもしておかなければならないことがあると言います。「例えば『ごめんなさい』をそんな気持 ちがないのに言っても何の意味もありません。どうしてこうなったかを聞くんです。そして『ごめんなさいって言ってもらうとうれしくなるね、じゃ今度何か あったとき、ごめんなさいって言おうね』と語りかけています」とのこと。お母さんたちは、危ないものはよけてレールを敷いてしまいがち(そう言われて心あ たりのある方いませんか? 私もそう…)。だからこそ何かあったときに解決する能力を育てる補助ができれば、というのが教育目的のひとつだそうです。
外国に住んでいると、まわりから日本語が入ってくることが少ない分、言葉を直してもらう機会もあまりありません。高学年になっても『おてて』と言ったら笑 われてしまいます。『こどもの国』で心がけているのは、なるべく幼稚語を使わないこと。おやつの前の歌は※おててもきれいに、でなく※両手もきれいに、と 直して歌っています。擬態語の使い方を教えるためにも先生方は『サラサラ流れる』『だらだら言う』などたくさん入れて話しています。

字を書くのは1年生からで十分
現在、月曜から土曜までの3時間保育に通う3―5歳児の数は125人。希望の時間帯と曜日を選べるため、英語の幼稚園と併用している子も多いそうです。 「小さな子にすぐ座りなさい、というのは無理。自由時間を大切に、しばらく遊ばせてからクラスを始めています」とのこと。3つのテーブルにはおはじきやは かり、楽器、粘土などが用意されています。これらの教材は『伊藤育英財団』からの支援で揃えられ、遊びながら自然に学んでいく環境づくりが整っています。
大きな特徴は、キンダークラスまでは読み・書きを教えないことです。書き順、間違った字体を直すよりは、筆圧コントロールが出来るようになってから指導す るほうがいい。読みたい、書きたい気持ちをいっぱいにしておいて1年生で書きましょうともってくるほうが効果的と『こどもの国』では考えています。「字を 書くのは1年生からで十分」と話す本間先生。字が読める子には『いいね。みんなに読んであげて』と褒めてあげますが、それを評価の基準にはしていないそう です。

人とのつながりを大切に
2世の子どもたちを対象にスタートしたこの学校も、現在では80パーセントがどちらかの親が日系という家庭の子どもたちに変わりました。両親が日本人とい う子どもはわずか10パーセント。まったく日本語のバックグラウンドを持っていない子どもも10パーセントいます。家庭ではお母さんと日本語、学校はフレ ンチイマージョンでお友達とは英語という生徒も少なくないそうです。学校では日本のいいところ(学習態度など)とカナダのいいところ(個性を伸ばす)を取 り入れて人間形成に努めています。
日本語学校主任教論の内藤邦彦先生は「小学生のうちは宿題を一緒にやるなど、家庭の協力が大事です。中学まで続けば、自分から日本語や日本の文化に興味を持って、学習が積極的になる生徒が多いです」と話してくれました。
キッチンではこの日、卒業生が保護者にフランス料理を教えていました。「103年の歴史の中で学校教育に最も大切なのは人とのつながり」と先生方がおっしゃるのはこういうことなのでしょう。

(取材  ルイーズ阿久沢)

バンクーバー日本語学校ならびに日系人会館
475 Alexander St.
Vancouver BC V6A 1C6
電話 (604) 254-2551

http://www.vjls-js.com

 

2009年3月26日発行#13掲載

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