How to Live 『暮らしインフォ』
在バンクーバー日本国総領事館・日加ヘルスケア協会共催
〜2008 メンタルヘルスセミナー〜
留学生のメンタルヘルスをサポートするために その4
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![]() 休憩タイムには、頭をリラックスさせるマッサージ体操を紹介する原田先生 |
6月18日、在バンクーバー日本国総領事館において、在バンクーバー日本国総領事館と日加ヘルスケア協会共催のもと、留学生をサポートしているESLスクールのスタッフ、経営者、留学紹介関連会社に働く人々のためのセミナーが開催された。最終回となる今回は、ファミリードクターの田中朝絵さんの講演内容を紹介する。
(取材 西澤律子)
「心の問題への対応の仕方」 DR 田中朝絵(ファミリードクター)
このセミナーの目的
メンタル・ヘルスの問題を持った留学生があなたの所に来た時にすべきこと。
1.危険な状態か判断する 2.適切な治療へ 3.再発を防ぐ
危険な状態とは
1.自殺の可能性
青年では死因の2番目になっている。女性の自殺企図は男性の2〜3倍だが、男性の方が一般的に既遂が多い。あらゆる自殺行為や脅しは真剣に受け取らなければならない。自殺者のおよそ8割がなんらかの警告やメッセージを周囲に送っていたと言われる。自殺念慮や自殺願望について、思春期の青少年と話すことを恐れなくていい。自己破壊の考えを患者に植えつけることになるという心配には根拠がない。援助したい人がいるということに、本人が気付くだけでも助けになる。
2.自分を傷つける可能性:自傷行為、浪費、麻薬、飲酒、性病、妊娠など
3.他人を傷つける可能性:このような危険な状態の時は、すぐに精神科等の受診が必要
自殺のリスクを高くする要因
過去の自殺企図、入院の経歴、持続的な欝の既往、絶望感、衝動と攻撃性、反社会的性質、アルコール・薬物への依存、子供時代の深刻な虐待(とくに性的)、早い時期の喪失体験(幼い時期に親を亡くす)など。
自殺前に見られる行動
いつもと違う行動をとる(ギャンブル、株式投資、アルコールや薬物の乱用)。感情が不安定になり、ささいなことで怒ったり、激しく口論したりする。投げやりな態度が目立ち、身なりに構わなくなる。不自然なほど明るく振る舞う。自殺の計画を立てる(遺書の用意、自殺手段の用意)。別れの用意をする(大切なものを誰かにあげる、思い出の場所に行きたがる、手紙や日記を処分する、など)。
自殺企図を聞き出すには
まずは、生徒とのラポール(rapport)の確立。そして同じ波長と信頼関係の設立が大切。ラジオのチューニングのように、生徒の波長に自分を合わせる。生徒が部屋に入って来たときに、静かで暗い状態のときには、明るく励ますより、少しトーンを落として話す。「僕もカナダに来たときは大変だったよ」というような感じで。
自殺の可能性があるかもしれないと感じる場合は、「もう生きることが嫌になることがある?」とか「自分を傷つけたりすることがあるの?」など、直接はっきりと訊いた方がいい。自殺を考えているという返事が返ってきた場合はその方策も尋ねる。例えば、飛び降りをほのめかした場合、「どこで?」、薬物や銃器という場合は、「持っている?」などというように。その際、どれだけ具体的な返事が返ってくるかで、意図の真剣さを推し量ることができる。
自殺の可能性があると判断したら
自殺の可能性があるのなら、カウンセリング、精神医学的評価が必要。24時間サービスを提供している救急自殺予防センター、CRISIS LINE 1-800-SUICIDE (784-2433)に電話し、「JAPANESE PLEASE」と言う。通訳を含め、四者で話すことができる。
もし自殺の危険が迫っていたら、最寄りの救急室(ER)に連れて行く。または911に電話し、「JAPANESE PLEASE」と言う。連れていくのは難しい場合も多いが、生徒との間にラポールがあれば、その子に合った説得の方法が見つかる。
電話
もしすでに自殺行為をしてしまった、または行為の最中であると生徒が電話してきたときは、住所を聞き、別の人が直ちに911で警察に通報(電話を逆探知)し、救急車が到着するまで自殺企図者に電話で話し続け、その間に救助を試みるべきである。
適切な治療へ
精神科などの受診をすすめようとしても、患者の同意が得られないことも少なくない。カウンセラーに会うことに抵抗を持つ人には、ファミリードクターやウォークイン・クリニックのドクターなど、プライマリードクターへ行くことをすすめてみる。内科的な問題(ホルモンのバランスが崩れている)の可能性もあるのでまず医者に見てもらおうと誘ってみる。
再発を防ぐ
カウンセリングに留学生が行き始めても、時々会い、援助し続けたい意思を伝える。最後のカウンセリングの後、セラピストと電話で話し、フォローアップを相談(留学生の許可が必要)。周期的に留学生と会い、いつでも話しに来やすい状態を保つ。
言ってはいけないこと
・がんばれと、励ます。「がんばらなければならない」と一番思っているのは本人。
・怠け者扱いする。「休むのが治療だ」と理解する。
・嫌がられるから声をかけない、かまいすぎる。適度な距離を置きながらも、理解をもって接することを心がける。
・何が原因なのか、問い詰める。周りの人はまず「どうすればよくなるのか」を考える。
まとめ
・SOSのサインを受け止めよう。
・早めにカウンセリングを受けるよう勧める
・カウンセリングだけでなく、周りの人の優しい言葉、理解、協力が必要。
日本語対応が可能なメンタルヘルスの専門家 ●精神科医 |
(この記事の掲載は2008年8月7日 第32号です。)