How to Live 『暮らしインフォ』
在バンクーバー日本国総領事館・日加ヘルスケア協会共催
〜2008 メンタルヘルスセミナー〜
留学生のメンタルヘルスをサポートするために その2
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![]() 堀江通旦氏 |
6月18日、在バンクーバー日本国総領事館において、在バンクーバー日本国総領事館と日加ヘルスケア協会共催のもと、留学生のメンタルヘルスをサポートするためのセミナーが開催された。前回に引き続き、今回は、精神科医の堀江通旦氏の講演内容と、セミナーに参加した留学エージェントスタッフの現場からの声を紹介する。
(取材 西澤律子)
「せっかくカナダに来たものの」
精神医学的観点から見た留学生の不適応問題
精神科医 堀江通旦氏
ESLを志望する留学生
留学生には、高校生、ワーキングホリデー、カナダでの進学をめざし、日本で休学して渡加している20代の大学生、30代の社会人に分かれるが、臨床では大多数が10代である。
留学の目的は、2〜3週間観光を交えて見聞を拡げる短期留学と、5カ月〜1年以上カナダの高校、カレッジ、大学へ進学する長期留学、また就職および移住を視野に入れたものに分けられる。
不適応問題の表面化
症状としては、友達、ホストファミリー、同僚との摩擦などから起きる過度のホームシック。また家庭の圧力から解放されて学校をさぼり、ブラブラ遊び回るなど現実逃避などの傾向が見られ、何のためカナダに来たのかわからないと周りが心配し、相談。
その他にも、問題とみなされる行動に、内向型として、不登校、ひきこもり、摂食障害、自傷行為,自殺未遂など、外向型として、暴力、麻薬、過剰な異性関係などが挙げられる。
カウンセラーと連絡を取るのは、教師、家庭教師、スクールカウンセラー、コーディネーター、ホストファミリー、本人。ひきがねとなるのは重なるストレスであるが、その原因は、文化の壁(習慣および発想の違い)、言葉の壁(意志や感情表現の乏しさから来る人間関係の問題)、授業の内容(日常英語の不足、不慣れな専門用語、社会常識の不足のため授業について行けない)、安心出来る環境がないこと(英語の世界での孤立)、日本から持って来た問題の継続、または再発(カナダ留学の動機に問題がある場合、現実逃避の可能性も)などが考えられる。
診断名
・適応障害(ストレスに対する不安反応、鬱反応、行動 障害)
・鬱病、躁鬱病
・摂食障害
・ADHD(注意欠陥/多動性障害)
・読み書き(学習)障害
・その他(自閉症含めての発達障害、統合失調症)
「留学カウンセラーの立場から」
健康な心身があってこその留学
留学先では、身体の健康はとても大切です。健康な体があってこそ元気に学校に来ることができ、友達と出かけることができます。ただ、最近目立つのが心の健康です。英語では、メンタル・ヘルスとして私たちの生活に欠かせない健康管理の1つとして日々の会話に登場します。
語学学校で働いているスタッフは、何千人という生徒を毎年日本から受け入れます。留学と一言で言っても、短期や長期、老若男女、キャリア向上を目的とする留学、ホリデー中心の留学とさまざまな留学形態があります。たいていの生徒は、「楽しかったです!またお金を貯めて留学をします」と帰国をします。
ただ、留学中に精神面で問題が生じる生徒も多いことが留学の現状です。通常、1人の生徒の留学が実現するまでに、たくさんの人がお手伝いをします。留学の第一歩は、留学エージェントでカウンセリングを受け、個人にあった渡航先や学校の決定。そのときに、留学経験を有したカウンセラーから留学で得る素晴らしい体験と留学が引き起こす思いもよらないストレス(文化や言葉の壁)についての説明があります。
高すぎる期待と現実のはざまで
よく、他のカウンセラーさんから耳にすることは、現地でトラブルにあう生徒さんの特徴として、「留学目的がはっきりしていない」、「自分の留学なのに他力本願、実際に留学に必要な費用と貯金に大きな差がある」、「日本で何かしらの問題を抱えている(留学が現実逃避になっている)」、「うまくいかないことはすべて他人の責任(自分自身と向き合わない)」というような傾向があること。
私自身が、留学カウンセリングをしていて気づくことは、あまりにも期待が高い質問が多いことです。例えば、「3カ月学校に通ったら英語が話せますか?」、「カナダ人とすぐに友達になれますか?」、「カナダで仕事ができて永住できますか?」。これらの質問の答えは、YESでもNOでもありえます。正直に言いますと生徒の持つ実力と運次第です。
実際にカナダに渡航して、英語が思うように上達しなかったり、英語を使う仕事につけなかったりと、カナダにいてもカナダ社会から孤立している孤独感を感じることは珍しくないと思います。語学学校に通う生徒のほとんどは、このような気持ちを経験したことがあるのではないでしょうか?
英語以前にコミュニケーションがとれない
留学すれば新しい自分を発見できる!変われる!…期待が高ければ高いほど現実の壁にぶち当たったときのストレスは大きいようです。日常生活では、そのようなストレスから精神状態のバランスが崩れ始めます。そんなときは、留学カウンセラーや学校スタッフは、即座に対応をして、長年の経験を生かしてアドバイスを心がけます。もちろん、相談を受ける側は、生徒さんに早く立ち直っていただきたいという気持ちで接しています。
ただ、悲しいことに、精神状態の不安定な生徒が毎年増え続けていることが現状です。また、自分本位でしか物事を考えられない生徒が増えていることも見過ごせない事実の1つです。カウンセラー、講師、ホストファミリーの気持ちに配慮せずに自分の欲求だけを満たすことが優先で、コミュニケーションがまったく取れない10代、20代の生徒が多いようにさえ感じます。周りの空気を読もうと努力をするが、ダイレクトなコミュニケーションで傷つくことを恐れる。英語を超えたコミュニケーションの真髄で躓いているようにさえ見えます。
堀江通旦(ほりえみちあき)氏プロフィール 1965年九州大学医学部卒業。1967年ドイツに渡り、ハイデルベルグ大学とその他の病院で精神科医としての専門教育を受け、学位取得後、カナダへ移住する1989年まで開業。現在、BC州シドニー市に住み、カウンセリングのかたわら、月1回バンクーバー総合病院で精神科の外来やTrinity Western University大学院で非常勤講師として精神病理学を教える。著書24冊。 |
(この記事の掲載は2008年7月10日 第28号です。)