How to Live 『暮らしインフォ』
生活上の困難に立ち向かうための親身の支援
だれもが無料で受けられる
CHIMOクライシス・サービスの手助けプログラム
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![]() アウトリーチサービスを立ち上げたニーナさん |
![]() 援助サービスの範囲は住居から家族関係までと幅広い |
![]() 「チモ」はイヌイットの言葉で「友達」の意味 |
刑事事件が発生すれば警察を呼び、急病ならば救急車を呼ぶ。では生活で窮地に立たされたとき、私たちはどこに助けを求めたらいいのだろう。2006年にスタートした「アウトリーチ&アドボカシーサービス」はそんなときの手助けになる心強いサービスだ。
「手を差し伸べる」の「アウトリーチ」、「支援」の「アドボカシー」からなる名を持つこのサービスは、リッチモンドに事務所を持つ非営利団体チモ・クライシス・サービス(CHIMO Crisis Service)の行うプログラムの一つである。
チモは1973年に創設され、BC州政府やバンクーバー・コースタル・ヘルス、リッチモンド市からの補助金、その他の企業・団体・個人からの献金で運営されており、生活のなかで困難な状況に直面した個人・家庭・地域社会のため、支援活動に精力的に取り組んでいる。
活動内容は多岐にわたる。高校に出向いてのストレスマネジメントや自殺予防の講習、良好な家族関係を保つための親向けの講習会、家庭内暴力の被害者のためのシェルター「ノバ・ハウス」の運営や心理面をサポートする電話相談「クライシス・ライン」を含む16のサービスがある。なかでも特にここで詳しく紹介したいのは、冒頭に挙げた個人の生活上の問題解決を手助けする「アウトリーチ&アドボカシーサービス」だ。
手助けが不要になるまで手を取っていくアウトリーチ&アドボカシーサービス
このサービスの具体例を見てみよう。
シングルマザーのJさんは自分の働きでなんとか家計を支えていたが、ある日交通事故に遭い、働くことができなくなってしまった。他に収入の当てもなく、「どうやって子どもたちを養い、家賃も払っていけば良いのか」と悩んでいたときに、チモに助けを求めた。
このチモのスタッフは素早くBC州のヒューマンリソースに連絡を取り、Jさんに雇用保険が支給されるまでの間、生活援助金を支給してもらえるよう手配した。その後、チモのスタッフは雇用保険の申請書の記入を手伝ったほか、Jさんが家賃を支払えない間も家に住み続けられるようにするための家主との交渉に同行した。 こうしたチモの支援を得てJさんは「家族を世話できないのでは…」という心配なしに、ケガの回復に向けて養生することができたのだった。
このサービスのコーディネーターとして働くニーナさんは語る。「この支援はカウンセリングとは違います。一例として、普通に仕事をしていた人が、ある日郵便で巨額の請求書を受け取って相談に来られたときのことを挙げましょう。それは過去に受け取った学生ローンの請求でした。しかしとても自分で払える金額ではなく、どうしたらいいのかと困り果てて私たちに電話をしたのです。それで彼女にはオフィスに来てもらい請求書を一緒に見て、彼女にどんな法的権利があるのか、他に低額で分割によって支払う方法があるかを共に考えました。新移住者は特に、また長く住んでいる人であっても、カナダの制度がどのように機能するかは知らないものです。仕事や子どもの世話などで日常生活は忙しいですからね。そんななかで困難に出会うと非常にストレスを感じるものです。私たちはそうしたストレスを少しでも軽減できたらという思いで活動しています」
暮らしのさまざまな非常事態に対応
支援の対象としているのは次の事柄である。
●住居
●収入補助
●家族関係
●家庭内暴力
●雇用
●移民
●年金、補助金
●身体障害
●メンタルヘルス
もし以上のことに当てはまらない場合でも、必要な組織や機関をスタッフは案内してくれる。
例えば、薬物の中毒になっているという人からの相談の場合、薬物中毒者のためのサービス機関を案内する。通常の相談所ならばここで単にその機関の連絡先を紹介するだけに留まるが、チモのサービスは異なる。「相談をしても『あそこに行け、ここに行け』と言われるだけでは、相談者は戸惑ってしまいますよね。私たちは紹介する機関に予約を取って、その人が該当機関に行く際には同行します。きちんと必要なサービスを相談者が受けられる状態を見届けるまでが自分たちの役目だと思っていますから。“相談者の手を取り、その人と共にいること”が私たちのサポートの方法なのです」(ニーナさん)
実際に手助けにあたるのは、チモに所属し、集中的なトレーニングを受けたボランティアが中心となっている。具体的な支援の方法は次の通り。
・コミュニティで利用可能なサービスの情報を集める。
・話を聞いてくれ、感情的なサポートをしてくれる。
・書類を記入する手伝いをする。
・他の組織・機関(例:弁護士、住居関連の人物など)に予約を取って、クライアントが話をする手伝いをする。もしくは直接担当者と話をする。
そしてこのアウトリーチサービスは
・無料でサービスを受けられる。
・どんな人も相談可能。−収入やビザの制限はない。
・個人情報は厳守される。
の3つの方針が貫かれている点が特徴だ。
オフィスはリッチモンドの中心地にあるが、足を運べる人であれば、サービスを受けることが可能。オフィスへ来ることが困難な人には、相談者の住まいに近い場所でチモと同じようなサービスをしている組織を紹介することになる。
日本語ボランティアスタッフ・美野さんより
チモのボランティアスタッフの一人・末吉美野(すえよし・みや)さんは、高校でチモ主催のストレスマネジメントに関するワークショップを受けたのがチモとの最初の出会いだったという。
社会的なボランティア活動を行おうと考えたときに、チモの存在が頭に浮かび、面接を受け、1か月みっちりと研修を受けて実際のボランティアの仕事を昨年から始めた。
「この1年では、精神的な病を抱えて会社から解雇された方や離婚や住居に関してトラブルを抱えた方などに対応しました。わからないことだらけですが、その都度コーディネーターのニーナやリタに相談しています。彼女たちは実に多くのことを知っていて、適切な指導を与えてくれます。なかには解決の手立てが見つからない複雑な問題もあります。でも相談者の話を聞き、なるべくそばにいてあげられたらと思っています」(美野さん)
気持ちのはちきれそうな相談者にとって、話を聞いてもらうだけでも、心理的な負担はぐっと軽くなることだろう。
現在、日本語の話せるボランティアは毎週火曜日にオフィスに来る美野さん一人である。しかし、火曜日に相談が難しいという場合、美野さんと相談のうえ、日時を決めることもあるという。ただしこうした融通をきかせてもらえるのは言葉の問題が一番の障害となっている相談者に限られる。
6月半ばからは日本語を話せるスタッフとして、新たに中川ジェニーさんも加わる予定である。
学びの多いボランティア活動
当初、ニーナさん一人で年間30人を手助けしてきたが、今はボランティアが増え、言語は14カ国語に対応できる状態になり、周囲の人たちのサービスの認知度の高まりもあって年間300人を援助するまでになってきた。「今後、利用者と共にボランティアスタッフももっと増やしていけたら」とニーナさんは語る。美野さんは「一人の相談に対応するだけでも、ものすごいスピードでとても多くのことを学びます。そうしたなかで、自分に自信がついていっていることも感じます」
援助を必要とする人のもとに、心ある人たちの手が届く。住み良い社会とはそういうものに違いない。苦しいときには助けを求め、与えられるときには手を差し伸べていこう。
ボランティアの受付も常時行っているのでぜひアクセスしてみてほしい。
CHIMO Crisis Services
Outreach and Advocacy Service
120-7000 Minoru Blvd, Richmond
Tel:604-279-7077(CHIMO代表電話)
ウェブ:www.chimocrisis.com
電話および訪問での受付は上記だが、アウトリーチサービスの提供場所は近隣の別のオフィスとなっている。相談時に案内を受けよう。
(取材 平野香利)
(この記事の掲載は2008年5月22日 第21号です。)