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「日本人を巻き込んだ住宅賃貸法に関するトラブルが一向に減らない」という危機感から、こうした相談を多く受ける隣組が主催となって、邦人関係機関を対象に、住宅賃貸法トラブルに関するワークショップを今年2月に行った。
講演者は、Residential Tenancy Branch(RTB:住宅賃貸法事業部)からバーストン・知代さんを迎え、入居者/借家人(Tenant)としての立場から、住宅賃貸法に関する知識とトラブル回避のための対処法などの説明が行われた。
入居前までの手続きについての注意点を紹介した前回(本紙4月3日号に掲載)に続いて、今回は入居中、退出時の注意点を紹介する。
1.入居中 / 修理について
前回紹介した契約時の注意点で、契約書内容の付帯条項などを記入する “Rent”の部分にマークされた備品に関して、それらのものが入居者の事故によるものではなく、故障した場合は、速やかに家主に連絡、修理を依頼すること。
こうした場合の修理義務は家主が負うことになっている。そのため、修理費を入居者が支払う必要はない。書面での家主の了解なく修理費を立て替えると払い戻してもらえない場合もある。
≪注意点≫
■修理依頼は故障がわかったら速やかに行うこと。これを怠り大事故に発展した場合は、入居者の責任となることもある。
■修理依頼は必ず書面にて行う。名前、部屋番号、日付、故障内容などを記載して、コピーを取っておけば万全。
緊急を要する修理として規定されているもの(大きな水漏れ、水詰まり、主要な暖房システムの故障、電気システムの故障、鍵のかからない外部へのドア)に対しては、まず家主に2度電話連絡し、それでも修理してもらえないようであれば、入居者が修理人を雇い、その金額を次月の家賃から差し引くことができる。
2.入居中 / 家主の部屋への出入りについて
家主が入居者の部屋に入る必要が生じた場合は、入居者の了解がない場合、入居者への書面による24時間から30日前までの告知が必要となる。
こうした場合としては、例えば前述のような修理を依頼されて部屋の中で修理を行わなければならない場合や、次の入居者に部屋を見せる場合、住居の点検を行う場合などがある。
家主とはいえ、緊急時以外、入居者の部屋に勝手に入ることはできない。
【!知っておこう】
●家主は緊急事態などに備えて、合鍵を持っておく必要がある。
●家主は部屋に誰が住んでいるかを知っておく必要があるので、他の同居人を入れたい場合、家主の許可を得なければならない。
3.入居中 / 家賃の値上げについて
家賃の値上げは家主の権利のひとつ。特に正当な理由がなくても実行できる。ただし実行する場合は一定の規則を厳守しなければならない。月極めの場合なら値上げは12カ月に1度まで、リースの場合はリース期間内は値上げできないことになっている。
値上げ告知規定
■必ず政府発行の現行の書類を使用して告知すること。
■告知は最低3カ月の猶予を持って行うこと。例えば、3月に告知書類を受け取った場合、値上げ開始は7月1日からとなる。翌月いきなり値上げはできない。
■値上げ幅は、政府が毎年発表している割合までとすること。BC州政府は、毎年その年の物価指数プラス2%という計算で最高値上率を発表している。2008年は3.7パーセントとなっている。これはRTB(Residential Tenancy Branch)のホームページで発表されている。
【!知っておこう】
●政府発行書類以外での告知は無効であること。
●値上げ幅が政府指定の基準を超えている場合、書面に正当な数字を示し、適正な家賃を支払うことができる。
●値上げされた家賃が支払った後で基準値を超えているとわかった場合。これには2つの対処方法がある。
1.もしそれまでの家賃が地域相場よりかなり安く、値上げ額も特に不満がなければ、家主と相談して契約書に署名する。
2.正しい計算式を示し、超過分を差し引いて支払う旨を書面にて告知し、正当な金額を支払う。
3.この件について、家主と話し合いの場が持てない場合は、RTBに相談、もしくは争議の申請をする。
4.転出 / 退去
入居者の意思で転出する場合、1.月極めの場合は、前月の終わりの日までに家主に書面で告知し、契約が切れる日までに転出する。2.リースの場合は、退出に対して2つのケースがある。入居者がリースの終わりに退去する旨サインした場合、その日に転出。そういった記録がない場合は、自動的に月極め契約となるので、1. と同様の方法で転出する。
家主から入居者に対して転出してもらいたい場合の告知は、必ず政府指定の書類にて行わなければならない。立ち退きの告知には、3つのケースがある。
1.10 Days Notice(10日以内の立ち退き告知):入居者が家賃・光熱費を支払わない場合にのみ告知できる。家賃・光熱費は告知を受けて5日以内に未納分を支払えば、告知は無効となる。この告知に同意しない場合、5日以内にRTBで争議手続きをすること。
2.1 Month Notice(1カ月以内の立ち退き告知):騒音や挙動不審など、家主が不適切と考える理由がある場合に告知できる。家主側の一方的な理由付けのみで、入居者に思い当たるものがない場合は、告知を受けて10日以内にRTBに争議手続きができる。
3.2 Months Notice(2カ月以内の立ち退き告知):家主側の個人的な理由によるもの。例えば、『家族に使わせたい』、『改築』などがこの理由にあたる。この場合、最終月の家賃は無料になるか、返金される。リース契約の場合は、期間内にこの告知で入居者を転出させることはできない。家主側が提示した理由が正当でないと思う場合は、告知を受けてから15日以内にRTBに争議手続きができる。この告知を受け取った場合、最終月の家賃は無料あるいは同額が返金される。
入居者が転出することに両者が同意する場合、転出日を明記して両者がサインすれば双方の同意による転出となる。この書式もRTBが発行している。
5.退出 / 保証金の返金
家主は、入居者が退出した場合は、特に正当な理由がない限り、入居時に支払われた保証金を全額返さなければならない。
返金期日は、入居者が退出した日、もしくは入居者が次の転居先住所を家主に書面で知らせた日のどちらか遅い日から15日以内となっている。通常であれば、知らせた住所に小切手(チェック)が郵送されてくる。
【!知っておこう】
●現在の法律では、退出後保証金を返金してほしい場合は、住所を書面で一年以内に家主に知らせた時点で、その権利が発生する。
●転居先住所は、日本でも、友人宅でも、P.O. Boxでも問題ない。
保証金が返金されない場合について
これは、日本人学生やワーキングホリデーでの滞在者に対して、最も多く起こる問題である。対処法としては、
1.まず家主に連絡を取り、返金されていない旨を伝える。その時に返金する意思がないようならば、15日以内に返金しなければ、保証金を2倍にして返さなければならなくなることを告げる。これは法律で規定されている。
2.それでも返金されない場合は、RTBに保証金返金のための争議を起こす申請書を提出する。転居先住所を知らせた証拠書類を申請書に添付すること。もし家主に、家賃未払い、修理、清掃などのクレームがあれば、家主の方で争議の申請書を出すことになる。その場合、両方のケースが組み合わされるのが普通である。
現行の法律では、入居時、退出時の点検を家主と入居者が一緒に行うことが義務付けられている。その際、入居者が破損などに対し、ある金額を支払うことに同意することにサインすれば、残額が返金されると理解してよい。
<参加者とのQ&A>
Q:日本人短期滞在者に多いケースとして、2、3人で部屋をシェアしている場合、そのうちの一人が日本に帰ったので、そこに新しい日本人の短期滞在者が入居、引き継ぎという形で家主の許可のもと入居者たち自身で、それを繰り返し行ってきた。
そして10年後、その部屋を完全に引き払うとなった場合、その時の保証金は誰に支払われるべきなのか。実際にあった例として、家主側は最初に保証金を払った人に支払わなければならないと主張し、結局最後に退出した人には保証金が支払われなかった。
A:1カ月以上前に提出する退出届は最終退出者が家主に行わなければならないので、この人物が転居先住所を知らせておけば、入居者が保証金の返却を要求できる。同意に達さない場合、住所受領から16日後以降、すべての証拠書類を持って、RTBにて争議の申し込みをすることができる。
以上が講演の内容である。バストンさんのアドバイスとして、1.争議にはなるべく持っていかない方が好ましい。できるだけ話し合って解決すること、2.相談に際して“Intervention(仲介)”というRTBの無料サービスを利用することができる。日本語はバストンさんが担当しているということだった。3.それでもどうしても解決しない場合、争議の申し込みをする。
賃貸契約に関しては、さまざまな問題が発生し、個々のケースにより対処法も違ってくるので、上述したものが全ての場合に当てはまるということではないが、基礎的知識として知っておくとトラブルが起こった時の対処に役に立つということだった。バストンさんは「どうしても自分の手に負えないような問題が発生した場合は、RTBに連絡してください」と語った。
Residential Tenancy Branch
(RTB:住宅賃貸法事業部) バンクーバー地区
TEL:604-660-3456/FAX:604-660-2363
Email: HSRTO@gov.bc.ca
Website: www.rto.gov.bc.ca |
ファックスもしくはEメールで連絡を取る場合は、件名として、"To Ms. Cleo"、"To Chiyo" と記載するとバストンさんに届けられる。バストンさんへの相談内容は日本語でも受け付けている。 (
取材 三島直美)
※この記事は2008年5月8日掲載
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