SPECIAL 2008

2008年7月24日 第30号 掲載


音楽が世界の人々の心をつなぐ
ハリー青木氏の音楽人生を讃えるコンサート


楽しそうな表情で演奏に参加するハリー青木氏

青木氏の誕生祝いに用意されたケーキ

祝辞を述べる、在バンクーバー日本国総領事の大塚聖一氏

日系移民百年を記念して植樹する一世たち。真ん中のTシャツ姿が井上さん

リラックスした表情で最後の 打ち合わせをする参加者

コンサートが始まる前に用意された軽食を食べながらくつろぐ人々

教育者として名高いテッド青木氏



 民族音楽理論の研究者、作曲家、ミュージシャンとして数々の功績を残し、87歳を迎えてなお活発な音楽活動を続けているハリー・青木氏の音楽人生を讃えるコンサートが、去る7月20日、バンクーバーのファイアーホール・シアターで催された。このコンサートには、青木氏と交流の深いミュージシャンやアーティスト、30人あまりが参加。くつろいだ雰囲気の中で、アフリカからヨーロッパ、中国や日本など、世界各地の音楽や物語、詩の朗読などがおこなわれた。青木氏の長年の活動は、世界中各地の民族音楽や対話を通して、人々が自己のアイデンティティーを確立し、相互理解と交流を深めていくことによって、調和のとれた多様文化社会を育んでいくことに向けられてきた。このコンサートは、青木氏の長年の努力が、いかに大きな影響力を人々に与え続けているかを示すものだったと言えるだろう。

スコーミッシュ族の人々の祝福を受けて開演
 司会を務めたジャン・ウォールズ氏は、開演に先立って「フォーマルなのは青木さんのスタイルではない。ゆったりとくつろいだ雰囲気で進めていきましょう」と聴衆に呼びかけた。シアターの中は、演奏の場を聴衆が見下ろす形に座席がしつらえてあり、普通のコンサートホールとは全く違う「近さ」が感じられた。

 最初に挨拶に立ったのは、ファーストネーション(先住民)のスコーミッシュ族の長老グロリア・ウィルソンさん。ファイアーホール・シアターが建っている場所は、もともとスコーミッシュ族の伝統的テリトリー。その祝福を受けての開幕だった。


オープニングの祝福をするスコーミッシュ族の長老

テンバ・ターナ氏(左)とアルバート・セント=アルバートさん(右)の演奏


 

 

 

 


 そして最初の曲は、人類の故郷アフリカの民族音楽を演奏するテンバ・ターナ氏とアルバート・セント=アルバート氏に、全てのパフォーマーがそれぞれの楽器で参加した。人類がアフリカから世界各地へ散っていき、また音楽を通じて一つになる、そんなクロスカルチャー・ミュージックのパワーと楽しさを体感させてくれる、見事なオープニング曲だ。

青木氏との温かな交流が『音』になる
 ハリー青木氏は、1921年、バンクーバー島のカンバーランドで生まれ、幼い時からバイオリンなどの音楽に親しんできた。第二次大戦中の強制移動や収容所での生活の中でも、青木氏はハモニカで音楽への思いを育み続けたという。その後、ジャズの演奏家や作曲家、音楽理論の教師や数多くの音楽イベントのディレクターとして、北米各地で活躍を続けてきた。青木氏の影響を受けたミュージシャンやアーティストの数は非常に多く、今回のコンサートに集まった人々は、そのほんの一部のようだ。次々とフロアの中央に立って演奏する人々は、それぞれ青木氏と知り合えたことを喜ぶ言葉を述べ、中には涙ぐんでしまう人もいたほど。

 尺八の演奏をしたアルビン・タケガワ・ラモス氏は「9年前に青木さんとお知り合いになりました。彼と私の音楽の指向は全く違いますが、青木さんの『音楽への愛』の深さに感銘を受けました。また、青木さんが積極的に他の人の音楽を聴こうとする姿勢も尊敬しています。多くのミュージシャンは自分の音楽にばかりこだわって、他の人の演奏をあまり聴きませんからね」と、青木氏との交友によって多くのことを学んだと笑顔を見せた。


「青木さんは、とってもクールな人だ!」と語るラモスさん

「感謝の気持ちを形にしたかった」と語るハナザワさん

 

 

 

 

 

 

「アオキ・レガシー・ファンド」の設立へ向けて
 この日のコンサートの最後に、ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)のクリス・リー博士によって、「アオキ・レガシー・ファンド」の設立が発表された。この基金は、さまざまな文化的背景を持つ人々を音楽や対話を通じて相互理解と融和を図っていこうとする、各種の活動をサポートするために設置されるもので、UBCのセント・ジョンズ・カレッジが運営する。

 この基金の設置には、青木氏の兄で、カナダを代表する教育学の研究者の一人であるテッド青木氏の業績を受け継ぐものでもある。テッド青木氏は、長年UBCで教鞭をとり、多様な文化背景を持つ人々の理解を深めるための教育カリキュラムの開拓に努力した人だ。

 コンサートを企画したコミッティ・メンバーの一人、ジュディ・ハナザワさんは「私たちがどれほどハリーさんに感謝しているかを表現したいと思い、今年の3月頃からこのイベントの企画をしました。音楽を通じて人々の『ユニティ』を深めたいというのが青木さんの夢。この夢を実現するためのさまざまな活動をサポートしようと、基金の設立運動が始まったのです。今回のイベントで、UBCを通じて基金を運営していくことを発表できるのは嬉しいです」と、青木兄弟の夢を多くの人が受け継いでいけるようにとの願いを語った。

 参加者全員が声を揃えて花笠音頭を歌い、この日のコンサートは終了したが、音楽で人々を結ぶ青木氏の強い思いは、これからも多くの人々に影響を与え続けることだろう。

(取材 宮田麻未/写真 神尾明朗)

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