SPECIAL 2008
2008年5月8日 第19号 掲載
![]() 多忙にも関わらず「常日頃から機会を見つけて、できるだけ学生とも話をしようとしています」という学長 |
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西部カナダ最大の大学、ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)は、バンクーバーキャンパスの広大な敷地内に新渡戸記念庭園や人類学博物館、植物園、チャンセンターなどがあり、学生以外にもなじみが深い。今年は百周年を祝うカナダの名門大学として、カナダ内外に知られている、このUBCのトーペ学長に日本との関係を中心に聞くことができた。
まず、UBCとはどんな大学か知るためにも、その使命・ミッションについて教えてください
私は学長に就任してまだ二年も経っていません。また、UBCの卒業生ではなく、外部から来た人間です。しかしながら、UBCの学長に就任することで最も魅力があったのは、UBCの戦略的計画、TREK2010で明文化されたUBCの展望です。
TREK2010では、学生がグローバルな市民となる準備をし、市民社会、持続可能な社会価値を促進、さらにBC州、カナダ、日本はもちろん、世界の人々の役に立つような、優れた研究を行うことを展望として挙げています。
UBCの『グローバルな市民の養成』は、世界へのコミットメント・約束です。グローバリゼーションという言葉は最近の流行語ですが、UBCの学生は、このグローバル化が進む世界で、何ができるかについて、強い考えを持っていて感心します。将来についての考え、世界の他の地域、特にアジアとの関係など、しっかりとしたビジョンを持っています。
これは、UBCはカナダの西海岸、アジアへの玄関口にあること、そして日本人を含めてアジア系の学生も多く学んでいるためでしょう。いかに世界を変えることができるか考えるべきだ、考えていこうという認識が、学生にあります。
大学側でも、学生が世界市民となるのを助けるためにプログラムを用意しています。その一例が、学生が海外のNGOや企業などで実習を行うことができるCO−OPプログラムです。日本での実習もあって多数の学生が利用してきました。
コミュニティ・サービス・ラーニングは、大学で学んだことを、社会を変えていくために利用できるか考えて実行するもので、ボランティア活動などを行います。このようにUBCには学生が世界市民になるのをサポートするさまざまな機会があります。
「BC州、カナダ、世界の人々の役に立つような優れた研究を行う」UBCでの研究は、地元やカナダ国内はもちろん世界の問題とも関係したものということで、気候変動問題、感染病、遺伝子組み換え食品と多岐にわたります。
CO−OPはカナダの学生が日本など海外で働くものですよね?UBCには、日本人がカナダで働くプログラムの提供はありますか?
そうですね。CO−OPはカナダの学生が海外で働くものです。
日本人がカナダで働くプログラムですが、これはカナダ政府が学生に出すビザの問題があったため、かつては学生がカナダで働くのは非常に難しかったです。しかし、状況は昨年ごろから変わってきています。留学生が在学中に仕事をしたり、卒業後、カナダで仕事を探せるようになりました。従来のカナダの学生は日本で働くことができるものの、日本人はカナダでは働くことはできないという一方通行でしたが、今後、両方向への動きが、期待できます。
4月に移民法が変わり、高等教育機関を卒業すると、3年間就職しなくても滞在が可能になったそうですね
カナダ政府が規制を緩めたものですが、変化はほぼ一年前から始まっていました。これは才能のある人材を確保しようという競争は、世界規模で行われているとカナダ政府もとうとう認識したためです。私は、カナダ政府の移民政策の変化を歓迎します。
このようにカナダ政府が外国人の受け入れに寛大なのは、オリンピックが開かれる2010年までという意見もあるようですが
今回の変更はカナダ全体で、オリンピックが開催されるBCのみではありません。連邦政府でも、移民の問題を非常に重視していて、長期的観点で見ているという印象を受けています。
商工会議所のセミナーなどでも、企業は人材不足で困っているとの声をよく耳にします。州の経済界では優秀な人材が足りないという切実な悩みがあるようですが
そのとおりです。技術を持つ人材が不足していて、今回の移民政策の変更も、一つには企業からの強い要望があったためでしょう。我々大学も優れた学生、人材を迎えるため、政策の改善を求めて、ロビー活動を展開してきました。
その甲斐があってか、政策に転換が見られています。例えば、Vanier Scholarshipは、カナダの大学院で学ぶ留学生をはじめとする学生のための奨学金です。前回の連邦政府予算で新たに生まれたもので、日本人でカナダに残って研究を続けてPhDを取得したいという人は利用を検討して欲しいですね。
カナダに来たいという人に対して、これまで国は奨励していませんでした。仕事に就くのが難しい、学習したくても、まず奨学金は利用できない。そんな状況から、カナダは大きく変わろうとしています。
移民政策の転換に応じて、UBCでも新しいスタッフを配備して、働きたいという留学生のサポートをするなどの対応を考えていますか?
サポート担当の人材を新しく雇用するなど具体的なことは、まだ決まっていませんが、可能性はあります。多くの学生がこのような機会を利用したいと考えていることを大学側は知っていますから。
世界市民の話がありましたが、大学としてどのようにして養成していこうとお考えですか?
UBCには、学生が世界各国から集まっています。教室で世界各国の学生の意見や考えに触れることができます。大学院を除くと、UBCの約15%の学生は海外からと、多数の留学生がいます。この留学生に門戸を広げ、かつ一部の国に偏らないようにする必要があるでしょう。
現在、米国からの学生が多いのですが、さらに多民族の留学生を確保する必要があります。日本からの留学生は、現在、351人ですが、もっと多くの学生を日本から迎えたいと思います。学生だけでなく、教授陣も同様で、さまざまな国からの優れた教授陣が必要です。教授の展望も多様であることで、グローバルな考え方を学ぶことができます。
次に学生が勉強や仕事を海外で行う機会をもっと提供すること。CO−OPやNGO、ボランティアとして海外で働きたいという学生、あるいは姉妹校での勉強を希望する学生は多数います。学生が海外で学習や仕事ができるように大学でも環境を整えていきます。UBCには世界中の姉妹校で学習するのをお手伝いするGO GLOBALというプログラムがあります。これらの機会を拡大させていきたいと考えています。
UBCというと立命館のイメージが強いのですが、日本の教育機関とのパートナーシップはどのような状態でしょう
他にも多数あります。例えば交換制度が東京大学農学部とUBCのLand and Food System学部の間にあります。遺伝子組み換えなどターゲットを定めた戦略的なパートナーシップによるものです。早稲田大学、慶応大学など多数の大学と関係があり、客員教授なども日本のさまざまな大学から迎えています。
UBCでは常に日本の大学、企業との結びつき、提携関係の拡大を目指しています。10年程前からの日本経済の停滞で難しかったですが、ここ数年、日本経済は回復していますし、今後のパートナーシップ拡大を期待しています。
日本の企業との産学連携について教えてください
トヨタ財団をはじめ、さまざまな日本の企業、団体にUBCの研究をサポートいただき非常に感謝しています。国際交流基金からも支援があります。日本からは、特に文化研究に多大な協力をいただいています。
しかしながら、過去数年、日本企業のバンクーバーでの活動は、以前のように活発ではありませんでした。約15年前は強い連携関係にありましたが、日本企業のカナダでの業務縮小などにより、関係拡大が難しい状況にあります。日本経済は回復しているということなので、この機に連携の機会を拡大できたらと思います。
日本へのメッセージを
UBCは数年来、規模だけでなく影響力も伸ばしています。世界の大学のなかでも、常に上位にランキングされています。カナダ国外との関係も重視しており、世界で最も重要な国の一つ、日本の産業界と強いパートナーシップを強化していきたいと願っています。例えばロボット工学の研究にも力を入れていますが、この分野は日本が世界のリーダーですし、協力していくことは非常に意義があります。
感染症研究についても、日本とカナダはともに強い関心を持っています。感染症は人の動きに従うものなので、一国に限らず、世界的な問題です。SARSではカナダで感染者が出て大きな影響を受けたこともあり、UBCには世界でも有数の研究グループがあります。
日本の企業、そして大学と協力して、研究成果をグローバルな社会に還元していきたいですね。日本の皆さんとも、カナダは異文化への許容性が高いことから、気持ちよくパートナーシップを築いていけると思います。
(取材 西川桂子)
ステファン・トーペ学長 (Prof. Stephen J. Toope) ハーバード大学(文学士)を優等(magna cum laude)、マギル大学大学院法学部を優等(honours) で卒業。ケンブリッジ大学トリニティカレッジで博士号取得。カナダ国際法評議会会長やマギル大学法学部学部長、トルドー財団創設会長などを経て、2006年7月にUBC第12代学長就任。副総長。国際法や人権などを専門としている。 |
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